日本トキシコロジー学会学術年会
第35回日本トキシコロジー学会学術年会
セッションID: P-014
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内分泌
プロテインジスルフィドイソメラーゼ(PDI)へのビスフェノールA類縁体結合能と酵素活性について
*橋本 翔子岡田 和嗣今岡 進
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抄録

近年、Bisphenol A (BPA)は脳神経系に影響を与えることが報告されている。この作用機序を解明する目的でBPA結合タンパク質を単離した結果、Protein disulfide isomerase (PDI)であることを明らかにした。PDIは活性中心に2つのシステイン残基を持ち、ジスルフィド結合を触媒するイソメラーゼ活性や、シャペロン活性を持つことが知られている。そこでBPAがPDIの機能へ及ぼす影響を解明することを目的とし、今回はBPA及びBPA類縁化学物質がイソメラーゼ活性及びシャペロン活性へ及ぼす作用について検討した。さらに、PDIイソメラーゼ活性部位の変異がBPA結合活性及びシャペロン活性に及ぼす影響を検討した。BPA類縁体としては、BPE、BPF、TBBPA、TCBPA、TMBPA、Cumylphenol、diphenylpropaneの計8種を用いた。その結果、diphenylpropropane以外の化合物がPDIに対して結合性を持ち、またイソメラーゼ活性を阻害した。このことから、イソメラーゼ活性はフェノール基含有化合物によって特異的に阻害されることが示唆された。しかし、いずれの化合物もシャペロン活性は阻害しなかった。さらに、PDIは2カ所のイソメラーゼ活性ドメインを持つことが明らかになっているが、その活性中心のうち1カ所あるいは2カ所のシステインをアラニンに置換した変異体を3種作製した。さらに活性部位を酸化(ジスルフィド)及び還元型(ジチオール)にしたPDIを精製し、BPAの作用を検討した。その結果、BPAに対する結合活性に差は見られなかったが、2カ所の変異体及び後半の変異体において、シャペロン活性が抑制された。このことから、活性部位の酸化還元状態はBPA結合活性に関係しないこと、さらにPDIの後半の活性部位の活性がシャペロン活性には必要であると示唆された。

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© 2008 日本毒性学会
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