抄録
【目的】免疫系賦活により誘導されるヘムオキシゲナーゼ-1(HO-1)は、生体防御タンパク質としての機能が示唆されている。in vitroマクロファージにおけるリポポリサッカライド(LPS)によるHO-1誘導は、一酸化窒素(NO)が重要な役割を担っていることが報告されている。しかし、in vivoにおけるLPSによるHO-1誘導に関与する因子は明らかとなっていない。本研究では、誘導型NO合成酵素(iNOS)及び腫瘍壊死因子α(TNFα)の各遺伝子欠損マウスを用い、LPSによるin vivo白血球中でのHO-1誘導に関与する因子の同定を目的に検討を行った。
【方法】C57BL/6系雄性の野生型(WT)、iNOS(-/-)及びTNFα(-/-)マウスにLPS(100 μg/kg)を静脈内投与し、経時的に血液を採取した。分離した血漿から、血中サイトカイン濃度及びNO濃度を、また血球から総RNAを抽出し、リアルタイムPCR法によりHO-1とiNOSの遺伝子発現変動を検討した。
【結果】WTマウスにLPSを投与し、血球中の経時的なiNOSとHO-1のmRNA量を測定した。その結果、iNOS及びHO-1 mRNA量ともにLPS投与3時間後から増加が認められ、6時間後にピークを示した。そこで、iNOS(-/-)とTNFα(-/-)マウスにおいても同様の検討を行った結果、両マウスにおいてもWTマウス同様に有意なHO-1 mRNAの増加が認められた。また、血漿中NO濃度は、TNFα(-/-)マウスにおいても増加が認められず、炎症性サイトカイン濃度は各マウスにおいて特IL-6の上昇が著しかった。
【考察】本研究の結果、LPSによる血球中HO-1誘導にiNOSとTNFαの関与は否定された。LPS処置によりTNFα以外のサイトカインの濃度上昇が著しかったことから、他のサイトカインによる関与があるものと考えられる。