日本トキシコロジー学会学術年会
第35回日本トキシコロジー学会学術年会
セッションID: P-038
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毒性機序
低酸素ストレス応答に影響を及ぼす外来因子とそのメカニズムの解明
*園淵 了慈上田 耕次今岡 進
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抄録
低酸素ストレスは生理的条件や病態下によって起こる日常的なストレスである。この応答に中心的役割を果たすのはHIF-1α(Hypoxia Inducible Factor-1α)で、最近我々は酸化ストレス応答の鍵因子であるNrf2の結合因子MafGがHIF-1αの機能にも関わることを明らかにした。一方で、フラボン類やポリフェノール類がこの低酸素応答を促進又は抑制することも明らかにしている。本研究においては、重金属及びこれまで我々が見出している低酸素応答に影響を与える化合物について、その機構を明らかにすることを目的とする。これまで我々は内分泌攪乱物質であるビスフェノールAがHIF-1αとシャペロンタンパク質であるHsp90の結合を阻害し不安定化させることや、α-ナフトフラボンがArntを介してHIF-1αの活性を抑制することを明らかとしている。今回、我々はZn2+がHIF-1αへ与える影響を検討した。Zn2+は通常酸素状態でHIF-1αのタンパク質量を増加させ核内移行を促進したが、HIF-1αにより調節される下流因子Erythropoietin(EPO)の誘導は起こらなかった。一方で低酸素下においてはZn2+の添加はEPOの誘導を抑制した。また核外排出阻害剤として知られるLeptomycinBによりHIF-1αの核内蓄積は促進したものの、下流因子EPOの誘導が抑制されたことや、またNADPHオキシダーゼ阻害剤であるDPICが低酸素状態でのHIF-1αのタンパク質量を減少させることで低酸素応答を阻害することを確認した。これらの因子による低酸素応答阻害のメカニズムを明らかにするためHIF-1αの水酸化酵素であるPHD、FIH、相互作用因子であるArnt、MafGに注目して検討を行った。
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© 2008 日本毒性学会
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