日本トキシコロジー学会学術年会
第35回日本トキシコロジー学会学術年会
セッションID: P-042
会議情報
毒性機序
DDAC気管内投与による肺線維化病変形成へのTGF-βの関与
*大沼 彩田島 悠吉田 敏則山口 悟大塚  亮一武田 眞記夫福山 朋季林 宏一佐々木 淳矢富田 真理子小嶋 五百合高橋 尚史竹内 幸子桑原 真紀千葉 裕子小坂 忠司中島 信明原田 孝則
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キーワード: TGF-β, 線維化, Smad
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抄録
4級アンモニウム化合物(陽イオン表面活性剤)のひとつである塩化ジデシルジメチルアンモニウム(DDAC)は,殺菌消毒剤や木材防腐剤として広く利用されている。今回,C57BL/6Jマウスを用いたDDACの気管内投与試験を実施し,肺に与える影響について検討した。0.01%DDACを気管内投与し,1,3ないし7日後のBALを採取したところ,炎症細胞の経時的増加がみられ,投与7日目でBAL中のIL-6が著しく増加していた。これらの炎症反応の増加は,病理組織学的に観察された巣状の肉芽腫様の線維化病変の拡大と一致していた。病巣内にはvimentinあるいはα-SMA陽性の線維芽細胞・筋線維芽細胞が観察された。そこで,細胞外マトリックス産生に関与するTGF-β1,-β2,-β3 mRNAの発現量をReal-time RT-PCRにより比較したところ,投与7日目にTGF-β1 mRNAの明瞭な増加とTGF-β3 mRNAの軽度な増加が観察された。また,TGF-β signalingの活性化を示すリン酸化Smad2/3の発現増加もWestern Blottingにより確認された。さらに,マウスの肺より分離した線維芽細胞様細胞にDDACを暴露したところ,TGF-β1 mRNAの増加とともにリン酸化Smad2/3 とα-SMAの発現増強が観察され,TGF-βRI kinase inhibitor (SD208)処置によりこれらの反応が抑制された。以上の結果より,吸入されたDDACは肺において肉芽腫様の慢性炎症を引き起こすこと,及びその病変形成過程にはTGF-β1/smad2/3 signalingの関与が示唆された。
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© 2008 日本毒性学会
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