日本トキシコロジー学会学術年会
第35回日本トキシコロジー学会学術年会
セッションID: CS4-1
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子どもの臨床試験に入る前に理解すること
薬物動態からみた小児
*横井 毅
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キーワード: 薬物動態, 小児
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抄録

小児期は生体機能が年齢とともに大きく変化するため、各年齢における薬物動態の特徴に基づいた薬物療法が必要である。経口薬の消化管吸収については、新生児の胃液のpHが高いことや、生後数ヶ月から半年は胃内容排泄時間が長いため、脂溶性の薬物を除いて一般に吸収が悪い傾向にある。腸管吸収率も新生児では低い。薬の体内分布については、血清蛋白量が低いため、蛋白結合率が低いが、生後1~3年で成人レベルになる。代謝活性は生後速やかに発達し、一般に2~3年で成人レベルになるが、例外も多く知られている。CYP3A7の活性は生後直後に活性が高いために、基質となる薬のクリアランスに大きく影響する。抱合酵素活性については、硫酸抱合の発達は速く、グルクロン酸抱合の発達は遅い。グルクロン酸転移酵素(UGT)分子種でも、UGT1A1やUGT2B7は生後3ヶ月程度で成人のレベルになるが、UGT1A6、UGT1A9やUGT2B7は数年から10年かかる。小児の酵素誘導能についての確かな報告はないが、CYPおよびUGTのいずれも成人よりも酵素誘導を受けやすいことが示唆されている。肝代謝については、小児は体重当たりの肝重量が大きく、肝重量当たりの肝血流量が大きいことの影響を十分に考慮する必要がある。薬の腎排泄能は新生児で未発達であり、生後2, 3ヶ月までは成人の半分以下であるため、有効量と中毒量の幅が狭いことに注意する必要があるが、生後1年程度で成人レベルになる。糸球体ろ過量は新生児では低いが、その後急速に高くなり、1年で成人の2倍になりその後減少する。以上、乳児、幼児や小児における薬物動態は個々の薬によって発達との関係が異なっているために、一様に論ずることはできない。個々の薬において薬物動態のデータに注意をした適切な薬物療法が安全性の確保には必要である。

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© 2008 日本毒性学会
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