抄録
【目的】毒性試験で汎用されているラット6系統に高脂肪食を2週間摂取させたところ,通常食摂取時に比較して脂質及び肥満に関連するパラメータにおいて明らかな系統差が認められた(第54回日本実験動物学会,2007)。そこで本研究では,これらの系統差が生じた要因を検討するため,高脂肪食を2週間摂取させたラット6系統おける血漿中インスリン及びアディポネクチン濃度を検討した。
【方法】Sprague Dawley(SD)系(Crl:CD(SD)及びJcl:SD),Wistar系(Jcl:Wistar及びBrlHan:WIST@Jcl)及びFischer系(F344/DuCrlCrlj及びF344/Jcl)ラット,6週齢雄各10匹をそれぞれ2群に分け,通常食(CE-2)あるいは高脂肪食(HFD-32:粗脂肪含量:32.0 %,総カロリー:507.6 kcal/100 g)を14日間給餌した。給餌開始14(非絶食下)及び15日目(一晩絶食下)に採血を実施した。血漿分離後,ELISA法により血漿中インスリン及びアディポネクチン濃度を測定した。
【結果】SD及びFischer系ラットでは通常食に比較して高脂肪食給餌群でインスリン濃度の増加が認められた。その程度はF344/Jclラットで最も顕著であった。また,Jcl:SD及びFischer系ラットでは,アディポネクチン濃度の低下も認められた。一方,Wistar系ラットでは,高脂肪食給餌群でインスリン濃度に差は認められず,BrlHan:WIST@Jclラットではアディポネクチン濃度にも差は認められなかった。
【結論】他の系統と比べて,F344/Jclラットは高脂肪食負荷によりインスリン抵抗性を生じやすい系統であるのに対し,Wistar系ラットは高脂肪食負荷による影響を受けにくい系統であると考えられた。