日本トキシコロジー学会学術年会
第35回日本トキシコロジー学会学術年会
セッションID: P-062
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実験動物・モデル動物
ミトコンドリア障害モデル(Sod2+/-マウス)の肝障害感受性に関する評価:トログリタゾンおよびアセトアミノフェンによる検討
*藤本 和則熊谷 和善伊藤 和美荒川 真悟安藤 洋介織田 銑一矢本 敬真鍋 淳
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抄録
Sod2へテロノックアウト(Sod2+/-)マウスはミトコンドリアでのSOD活性が半減しているため、ミトコンドリア障害の感受性が亢進している動物モデルとしてその有用性が示唆されている。最近、このSod2+/-マウスにトログリタゾンを28日間反復投与(30 mg/kg/day、腹腔内投与)すると、過剰なミトコンドリアへの酸化ストレスに起因していると考えられる肝障害(血中ALT活性上昇と肝細胞壊死)が見られることが報告された(Ong et al., Toxicol. Sci. 97, 205-213, 2007)。そこで今回、我々はこの再現性を確認するとともに、ミトコンドリア障害性を有する薬剤であるアセトアミノフェンに対する肝障害感受性をSod2+/-マウスとその野生型マウスの間で比較し、Sod2+/-マウスのミトコンドリア障害感受性亢進モデルとしての有効性を評価した。その結果、300 mg/kg/dayのトログリタゾンを28日間反復経口投与しても、Sod2+/-マウスで肝細胞壊死は見られず、再現性は得られなかった。一方、200 mg/kgもしくは300 mg/kgのアセトアミノフェンを単回腹腔内投与すると、Sod2+/-マウスで肝障害の程度が強くなり、またミトコンドリアへの酸化ストレスの程度もSod2+/-マウスで強く受けていることを示唆するデータが得られた。以上から、1) Sod2+/-マウスはミトコンドリア障害の感受性が亢進している動物モデルとして有用であろう。2) しかし、本マウスでトログリタゾンの肝障害は再現されず、ヒトで見られたトログリタゾンによる肝障害はミトコンドリアSOD活性低下あるいはミトコンドリア障害だけに起因した変化ではないと考えられた。
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© 2008 日本毒性学会
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