日本トキシコロジー学会学術年会
第35回日本トキシコロジー学会学術年会
セッションID: P-085
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薬物代謝
Nrf2活性化を介したCyp2b10遺伝子発現変動
*吉田 武美大久保 陽世芦野 隆山本 雅之沼澤 聡
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キーワード: シトクロムP450, Nrf2
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抄録
【目的】転写因子Nrf2は抗酸化タンパク質群や薬物代謝第二相酵素群など生体防御関連遺伝子発現を統合的に制御し、酸化ストレス、発がん物質、環境汚染物質などから生体を保護する。シトクロムP450(P450)は、薬物代謝第一相反応において酸化反応を触媒する酵素群であり、薬物によるP450の誘導は、PXRやCAR等の分子種特異的な転写因子の存在が明らかとなっている。本研究では生体防御という一連の観点から、Nrf2がP450の遺伝子発現調節にも関与するという仮説を立て検討を行った。 【方法】C57BL/6系雄性、8週齢のwild-type(WT)および Nrf2 ノックアウト(KO)マウスにブチルヒドロキシアニソール(BHA)、ホロン、フェノバルビタール(PB)を処置し、経時的に肝臓を摘出した。Cyp2b10のmRNAとタンパク質はそれぞれノーザンブロット法とウェスタンブロット法より測定した。肝におけるPBREM転写活性化はPBREM-Lucリポーターベクターを、CARの核移行はCAR-GFP発現ベクターをトランスフェクトすることにより検討した。 【結果及び考察】BHA、ホロンおよびOPZ処置によるP450各分子種のmRNA量の変動を検討したところ、特にCyp2b10 mRNAで強い増加が認められた。さらに、Nrf2 KOマウスを用いてホロンによるCyp2b10の mRNA量、タンパク量の変動を検討したところWT比較して両者とも有意に低下していた。次にNrf2活性化物質によるCyp2b10誘導が、Nrf2による制御なのか、転写因子CARによるものなのかを詳細に検討する目的でPBを用いて検討した。WTマウスと比較してNrf2 KOマウスでは、PBのCyp2b10 mRNA誘導能が有意に減弱した。さらに、BHA処置12時間後にCARの核集積が確認され、BHA処置よるCARの核移行が明らかとなった。また、PBREM転写活性がホロン処置24時間後で上昇した。しかし、Nrf2 KOマウスではこれらのことが認められなかった。以上のことから、Nrf2のCyp2bの遺伝子発現への関与が示唆された。
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© 2008 日本毒性学会
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