日本トキシコロジー学会学術年会
第35回日本トキシコロジー学会学術年会
セッションID: P-086
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薬物代謝
ヒト肝組織における薬物代謝酵素発現パターンの個人差の解析
*端 秀子三木 康宏藤島 史喜佐藤 龍一郎海野 倫明笹野 公伸
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キーワード: 肝臓, 薬物代謝酵素
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抄録
【目的】ヒトは一生の間様々な物質を主に経口的に摂取しているが、これら摂取された物質を生体に取り無害な形に変換して生体防御にあたっているのは、主に肝臓に発現する代謝酵素である。薬物代謝研究によく用いられている実験動物は、遺伝的背景が均一化されており薬物代謝酵素の発現パターンやその発現制御機構は種によって全く異なる。このためヒトへの影響を知る上で重要な個人差を考慮することが全くできない。そこで本研究では、実際のヒト肝組織における薬物代謝酵素の発現パターンの個人差について剖検標本他を用いて比較検討した。 【方法】当分野で凍結保存している剖検例15例および手術例5例から摘出した0歳~82歳の肝組織を使用した(東北大学医学部倫理委員会承認済)。ホルマリン固定パラフィン包埋標本を用いてHE染色標本を作製し、病変の有無(脂肪肝、線維化)を確認した。CYP3A、CYP2E1、CYP1A1を免疫組織化学にて評価した。また肝組織からRNAを抽出し、定量的PCRにて解析を行った。病理学的所見の結果と各遺伝子の発現パターンの比較検討を行った。 【結果】免疫組織化学の結果、CYP3Aは、成人では局在性が中心静脈周囲の肝細胞に限局しているパターンを示すのに対して新生児では全体的に不明瞭であった。CYP2E1は、CYP3Aに相関する傾向が見られたが局在性が異なった。CYP1A1は、肝臓にはほとんど発現しないとされているものの、いくつか中心静脈周囲を中心に発現している症例も見られるなど発現パターンに個人差が見られた。以上、実際のヒト組織を用いてその発現パターンと個人差を明らかにすることは、薬剤効果や代謝経路を検討するためにも重要である。これらの結果と定量的PCRによる各遺伝子の発現パターンの比較を現在検討中である。
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© 2008 日本毒性学会
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