日本トキシコロジー学会学術年会
第35回日本トキシコロジー学会学術年会
セッションID: P-156
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毒性試験法 II
Pig-A遺伝子を用いる新規in vivo突然変異誘発性検討方法の開発
*三浦 大志郎Vasily Dobrovolsky木本 崇文笠原 義典勝浦 保宏Robert Heflich
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抄録
【序論】Pig-A(Phosphatidyl glycan complementation group A)遺伝子はX染色体上に存在し、GPIアンカー合成に重要な酵素をコードしている。また、Pig-A遺伝子に突然変異が生じると細胞表面GPIアンカー結合タンパク(CD59など)が欠損することも知られている。我々はこの現象に着目し、Pig-A遺伝子を新規レポーターとする、化学物質による突然変異誘発性の評価系を考案した。今回、代表的な遺伝毒性物質としてエチルニトロソウレア(ENU)を投与したラットの末梢血において、CD59欠損赤血球頻度が顕著に増加することを確認したので報告する。  【材料および方法】5~11週齢の雄性F344ラットに10~160 mg/kgのENUを腹腔内投与(単回または1週間隔4回反復)し、投与後1~6週目に尾静脈から末梢血5~10マイクロリットルを採取した。採取した末梢血1マイクロリットルを0.2ミリリットルのPBSに添加した後、蛍光標識した抗ラットCD59抗体(BDファーミンジェン社)1マイクログラムを加え1時間インキュベートした。その後、PBSで洗浄し、フローサイトメーター(FACSort、ベクトン・ディッキンソン社)を用いて赤血球表面のCD59発現量を検討した。  【結果および考察】 無処置正常ラットあるいはPBS投与ラットから採取した末梢血でのCD59欠損赤血球頻度は15.1±11.2×10-6(平均±SD、n=44)であった。この頻度はラットにおけるPig-A遺伝子の自然誘発突然変異頻度を反映するものと考えられた。一方、ENU投与ラットの末梢血では用量依存的および経時的なCD59欠損赤血球頻度の増加が認められ、最高用量の160 mg/kgでは、単回投与後6週目に約600×10-6まで増加した。また、ENUによるCD59欠損赤血球頻度の増加は反復投与により増強されることも確認された。以上の結果から、フローサイトメーターを用いてCD59欠損赤血球頻度を検討することによりin vivoでの突然変異誘発性を評価することが可能と考えられた。
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© 2008 日本毒性学会
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