抄録
薬物や化学物質の安全性評価において,内分泌器官に対する影響の有無を確認する方法の1つとして,「血中のホルモン濃度」の測定がある.我々は市販のホルモン測定試薬キット(主にイムノアッセイ法)を用いて,ラット,イヌおよびサルにおける「血中ホルモンの日内変動および性周期に伴う変動」など,背景データ(情報)の収集に努めている.
しかし,近年,上市されていたホルモン測定試薬キットが突然,製造停止されることが起こっている.市販の試薬を使用する立場として「それに代わる試薬(代替測定試薬キット)の有無」および「その定量性能および使用上の注意点」について,可能な限り事前に情報を収集しておく必要がある.
この度,日本国内で広く使用されてきたGE Healthcare Bio-Sciences Corp.のラジオイムノアッセイ(RIA)キットの製造が2007年12月をもって中止された.このため,我々はこの代替測定試薬キットを見出すべく,主にラット下垂体ホルモン測定試薬(FSH,LHおよびTSH)について,数社(試薬メーカー)の試薬(測定キット)の定量性能(添加回収性および希釈直線性)の比較やメーカー間での測定値の相関性の検討などを実施した.
その結果,FSHについては,メーカー間に測定値の大きな乖離は見られなかった.一方,LHおよびTSHについては,メーカー間にその検出力(定量感度)に違いがあり,使用する上で注意を要することが判明した.