日本トキシコロジー学会学術年会
第35回日本トキシコロジー学会学術年会
セッションID: P-165
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毒性試験法 II
クエン酸フェンタニル及びフェノルバルビタールの炭酸ガス及びシアン化ナトリウム刺激ラットの呼吸機能に及ぼす影響
*馬  成俊今泉  真和直  弘飯塚  宏美西  勝英
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抄録
【目的】:安全性薬理コアバッテリー試験で汎用されているラットの呼吸機能評価系では、薬物の抑制的効果が捉え難い傾向にある。そこで、新しい呼吸機能評価系の確立を目的として、炭酸ガス(CO2)暴露(中枢性)或いはシアン化ナトリウム(NaCN)処置(末梢性)により呼吸を刺激した条件下で、クエン酸フェンタニル(Fen)又はフェノルバルビタール(Phe)のラットの呼吸機能に及ぼす影響について検討した。 【方法】:予め静注用のカテーテルを頚静脈に留置した週齢 9 ~10週の雄性SDラットを用いた。Fen又はPhe投与約10分後にCO2暴露(5-7%、約6分間)或いはNaCNの300 μg/kgを静脈内投与し、whole body plethysmograph法で動物の呼吸数(F)、1回換気量(TV)及び分時換気量(MV)を測定した。なお、平均吸気流量(MIF)はTV及び吸気時間(Ti)により換算した(MIF=TV/Ti)。 【結果】:CO2刺激では、F、TV、MV及びMIFに約2倍の増加が観察された。NaCNでもTVに軽微な増加、F、MV及びMIFに約2倍の増加が認められた。これらのCO2及びNaCN刺激によるMV及びMIFの増加は、Fenの100 μg/kg皮下投与又はPheの200 mg/kg静脈内投与で有意に抑制された。一方、呼吸無刺激の場合、Fen及びPheはF、TV、MV及びMIFのいずれにも明らかな変化が認められなかった。 【結論】:呼吸を刺激しない状態のラットにおいては、FenあるいはPheの呼吸抑制作用を捉えることはできなかった。しかし、中枢性及び末梢性に呼吸を刺激された動物では、Fen又はPheの投与により有意な呼吸抑制効果が確認された。本実験系は、特に呼吸抑制作用を示す薬物の評価系としては有用であると考えられた。
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© 2008 日本毒性学会
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