日本トキシコロジー学会学術年会
第35回日本トキシコロジー学会学術年会
セッションID: P-166
会議情報
毒性試験法 II
ホスホリピドーシスの発現における化合物物性―活性相関と細胞内移行の重要性
加藤 恵理子*中川 一平
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

化合物投与により誘発されるホスホリピドーシスについては現在までに多くの検討がなされているが、塩基性両親媒性によるホスホリピドーシスの発現について、化合物物性とwet試験の関連性を観察した具体的な発表例は少ない。そこで、本研究では、既知の塩基性両親媒性薬物および社内化合物について、in vitro細胞系試験とラットin vivo試験を実施し、ホスホリピドーシス発現および化合物の細胞移行性と化合物物理化学データとの関連を検討した。【実験】Imipramineなどの既知塩基性両親媒性薬物の4化合物および社内化合物52化合物について、ヒト単球系株化細胞(U937)における化合物暴露後のNBD-PE取り込み量をフローサイトメーターにて測定し、有意な取り込み増加が認められた濃度を求めホスホリピドーシス発現の指標とした。一方で、これら化合物の代表例についてラットに4週間経口反復投与し、肺におけるホスホリピドーシスの誘発を組織学的に観察した。また、in vitro細胞中あるいはin vivo組織中の化合物濃度を測定した。これらの結果と各化合物の計算物性値との関連を検討した。【結果・考察】clogP > 4でpKa > 8の構造を有する化合物(Zwitterionを除く)においてホスホリピドーシスが観察され、pKa < 7.5の化合物では脂溶性が高くてもホスホリピドーシスは認められなかった。塩基性化合物でホスホリピドーシスを誘発する化合物の細胞中濃度は、化学構造として塩基性の部分構造が異なるのみで塩基性を有しない化合物よりも高く、化合物物性により細胞移行性が異なり、細胞移行性の違いによってホスホリピドーシスが誘発される可能性が示された。ホスホリピドーシス誘発の可能性は化合物物性値のみで推測できるものであり、化合物物性値は毒性発現の面からも考慮すべき要素である。

著者関連情報
© 2008 日本毒性学会
前の記事 次の記事
feedback
Top