日本トキシコロジー学会学術年会
第35回日本トキシコロジー学会学術年会
セッションID: S3-3
会議情報
Fetal Basis for Adult Disease (化学物質の発生期曝露による大人での異常)
ダイオキシンの胎児曝露による遺伝子メチル化の変異
*大迫 誠一郎菅井 恵津子阪田 佳紀松田 佳奈吉岡 亘掛山 正心遠山 千春
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録
胎生期にダイオキシン類に曝露された実験動物では、成熟後の変異原物質投与による腫瘍の発生率が胎生期に曝露されていない対照群に比べて著しく高くなることが知られている。またこのような処置動物では、変異原の代謝活性化を司る肝臓内のシトクロムP450 1A1 (CYP1A1)遺伝子発現誘導が、変異原投与後の経時変化をとった場合対照群より長引くことも報告されている。発癌感受性の亢進にはこの現象が関与すると考えられるが、CYP1A1遺伝子誘導の延長がなぜ起こるのかその分子機構は不明である。本研究ではC57BL/6Jマウスをモデル動物として、肝臓ゲノムのエピジェネティックな変化の関与を検討した。妊娠13日目にTCDD(3μg/kg)またはビークルを投与し、生まれた雌を117-120日齢まで飼育した。この成熟個体に対して、再びTCDD(100 ng/kg)を投与し、肝臓内遺伝子変動を経時的に観察したところ、胎生期にTCDD曝露された個体ではCYP1A1 mRNAレベルの減少が遅いことが確認できた。一方CYP1A2やCYP1B1では対照群との差はなかった。この動物から肝臓ゲノムDNAを抽出し、CYP1A1プロモーター領域のメチル化パターンを解析した。マウスCYP1A1プロモーター領域(-1500bp)には-1300~-400において著しいCpGアイランドがあり、この中に8個のダイオキシン応答性配列(XRE: CACGCNW)が存在する。-1154~-458領域を解析したところ、マウス肝臓ゲノムDNAではTCDDの曝露非曝露に関わらず、XRE自身のメチル化は観察されなかった。しかし、胎生期にTCDD曝露受けたマウスの群ではメチル化の頻度が低くなる傾向が観察された。特に-500に位置するCpGのメチル化は対照群で33.3%と高い頻度であったものが、胎生期TCDD曝露により7.5%に減少していた。この胎児期TCDD曝露による低メチル化はCYP1A1遺伝子の誘導延長の分子機構の一つかもしれない。
著者関連情報
© 2008 日本毒性学会
前の記事 次の記事
feedback
Top