日本トキシコロジー学会学術年会
第35回日本トキシコロジー学会学術年会
セッションID: S3-4
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Fetal Basis for Adult Disease (化学物質の発生期曝露による大人での異常)
周生期エストロゲン曝露によるエピジェネティックな影響
*渡邉 肇
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抄録

 化学物質の曝露は、急性毒性や発癌にとどまらず、様々な恒久的な影響が懸念されてきている。特に胎児期や新生児期の曝露影響が成熟時の疾患につながる可能性も指摘され、Fetal basis for adult diseaseとよばれる新たな概念の研究が始まっている。さらに、こうした化学物質の影響は、曝露を受けた世代だけにとどまらず、世代を超えて子孫につながるという報告もなされてきており、こうした化学物質影響が長期にわたり影響をおよぼす作用メカニズムの解明が必要となっている。  我々は化学物質曝露の長期的な影響のモデルとして、ホルモン様化学物質の影響について解析を進めてきている。女性ホルモンであるエストロゲンやホルモン関連物質を新生児期のマウスに曝露した場合、成熟期に達すると連続発情の状態となり、膣上皮はエストロゲン非依存的な増殖が続く。この新生児期エストロゲン曝露をモデルとし、膣における長期的な影響の解析をすすめてきている。新生児期曝露のマウスから得られたDNAマイクロアレイによる遺伝子発現プロファイルの解析などから、新生児期曝露により、遺伝子発現が長期的に変化していることが明らかになってきた。これは、新生児期の曝露によりエピジェネティクな変化が生じていることを示唆している。そこで、発現が変化した遺伝子を中心として、ヒストン修飾やDNAのメチル化状態などを含めたクロマチン構造の変化を詳細に検討し、化学物質曝露がエピジェネティックなプログラムに及ぼす影響について解析を進めている。

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© 2008 日本毒性学会
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