日本トキシコロジー学会学術年会
第35回日本トキシコロジー学会学術年会
セッションID: O-15
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3.毒性機序I (肝)
肝肥大誘発化学物質の血清総コレステロール量に対する影響:化学物質の安全性評価に向けて
*根本 清光小林 章男吉田 緑西川 秋佳安田 隆宏山田 将貴水上 将典関本 征史下位 香代子榊原 啓之出川 雅邦
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抄録
 農薬をはじめ化学物質の中には、肝肥大(肝細胞肥大あるいは肝細胞増殖)を惹起するものが数多く知られている。したがって、その機序解明、ならびに、化学物質による肝肥大が適応反応か悪影響(肝障害ならびに肝発がんなど)かを判断できる指標を見いだすことは、化学物質の安全性評価を行う上で極めて重要な課題であると思われる。本研究では、非遺伝毒性物質で肝肥大を誘発する農薬2種(compound X、compound Y)と、既知の肝肥大物質フェノバルビタール(PB)、クロフィブレート(CF)を用いて、肝肥大誘発過程における血清総コレステロール(T-CHO)量の変動とその特徴を検討した。
 6週齢F344ラット雌雄を、対照群(基礎飼料)、compound X 20,000 ppm、2,000 ppm、compound Y 4,500 ppm、3,000 ppm、PB 500 ppmおよびCF 2,500 ppm混餌群として、投与開始3日目、4週目に断頭にて安楽死させ、血清の採取ならびに肝臓の摘出を行った。
 血清成分分析から、血清T-CHO量は、PB群の雄では投与3日目から、雌では4週目で増加が観察された。CF群は、雌雄いずれも投与3日目から低下が観察された。compound Xは、雄では投与4週目で増加、逆に、雌では投与3日目、4週目で低下が見られた。compound Yは雌雄ともに投与4週目で増加が観察された。これまでに、PBは肝コレステロール生合成酵素(HMG-coA reductaseなど)遺伝子の発現亢進、抗高脂血症薬ならびにペルオキシソーム増殖薬であるCFは肝コレステロール代謝酵素CYP7A1遺伝子の発現亢進作用が、それぞれ血清T-CHO量の増加や低下の原因になっていることから、現在、compound X、compound Y投与群におけるこれら遺伝子の発現変化を摘出肝臓のRNAを用いて検討中である。
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© 2008 日本毒性学会
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