日本トキシコロジー学会学術年会
第35回日本トキシコロジー学会学術年会
セッションID: O-14
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3.毒性機序I (肝)
抗IL-10抗体による内因性IL-10の阻害はcycloheximide誘発肝細胞壊死を増悪する
*熊谷 和善伊藤 和美安藤 洋介河井 良太矢本 敬寺西 宗広真鍋 淳
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抄録
薬物誘発性肝障害の進展には炎症性-抗炎症性サイトカインバランスが関与する。我々は以前、Kupffer細胞をgadolinium chlorideにより不活性化した後にcycloheximide(CHX)を投与したラット肝臓の遺伝子発現解析の結果から、Kupffer細胞が放出するIL-10が肝障害に保護的に働くと推察した。そこで今回、抗IL-10抗体(IL-10Ab)によるIL-10の直接阻害が、CHX誘発肝障害を実際に増悪するか検討した。雄性F344ラットにヤギIgGまたはIL-10Abを50 μg前処理(i.v.)した後、CHXを投与(3または6 mg/kg、i.v.)した(CHX群、IL-10Ab/CHX群)。ヤギIgG を前処理した後、生理食塩水を投与(i.v.)する群を別途設けた。投与2または6時間後に肝臓を採取し、病理組織検査、TUNEL法によるアポトーシス数および抗myeloperoxidase抗体による好中球数の画像解析、カスパーゼ3、8、9活性測定、RT-PCR解析を行うと共に、血清を用いた血液化学検査およびサイトカイン測定を実施した。その結果、CHX群では肝臓中IL-10 mRNAレベルおよび血清中IL-10濃度が増加したが、IL-10Ab/CHX群ではその増加が抑制された。一方、IL-10Ab/CHX群では炎症性サイトカイン(TNF-α、IL-1β、IL-6)の肝臓中mRNAレベルおよび血清中濃度がCHX群に対して有意に増加した。またIL-10Ab/CHX群において、CHX群と比べ、CHX投与2時間後にTUNEL陽性数およびカスパーゼ3、8、9活性の有意な増加を、CHX投与6時間後に血清中ALT値の有意な増加と病理組織学的に肝細胞微小壊死巣の増加を認めた。さらにIL-10Ab/CHX群ではCHX群と比べ、肝臓中Ccl20、LOX-1、E-selectin mRNAレベルおよび肝臓中好中球数が有意に増加した。以上より、CHX誘発肝障害の増悪には、IL-10阻害によるTNFシグナル経路を中心とした炎症性サイトカインの作用の増強が関係することが確認され、薬剤誘発肝障害に対するIL-10の保護作用の重要性が示唆された。
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© 2008 日本毒性学会
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