日本トキシコロジー学会学術年会
第36回日本トキシコロジー学会学術年会
セッションID: P-33
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臓器毒性,代謝,毒性試験法等
環境エピゲノミクスは生殖・発生毒性の発現機構の解明に有効である
*澁谷 徹澁谷 徹
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抄録
 近年,化学物質などによる“Epigenetics”の撹乱:“Environmental Epigenomics”(環境エピゲノミクス:EEG) についてのデータが得られ始め,多分野での貢献が期待されている.EEGは,発ガンを始めとする毒性学の様々な分野で,毒性の発現メカニズムを解明するための有力な手段となりつつある.一方,Baker (1986) は,健康と疾患の素因は受精時期から乳幼児期のEEGによって決定されるという「成人病胎児期発症説」を発表し,EEGは臨床医学でも重要な概念となりつつある.これらの解明には動物を用いた「生殖・発生毒性試験」のデータがますます重要となる.  「生殖・発生毒性試験」は複雑な生命現象を取り扱うので,多大な時間と労力を要する試験であるが,それらの毒性発現のメカニズムについてはまだ不明の点が多い.しかし,これまでに「生殖・発生毒性試験」が関与する;配偶子形成の異常,妊性の低下,催奇形性,出産児の行動異常などが,化学物質の遺伝子DNAのメチル化や染色体ヒストンのアセチル化によるEEGによることが動物実験あるいはヒトの疫学調査によって知られ始めている.経世代影響についても,その評価は今後の大きな研究テーマとなっている (Skinner et al: 2005).また内分泌撹乱化学物質の作用にもEEGが関与していることが知られている(Crews and McLachlan, 2006).  以上のことから,種々の化学物質について文献調査を行い,「生殖・発生毒性」の発現におけるEEGの関与についての考察を行った.まだ文献調査をした化学物質の数は少ないものの,化学物質によるEEGは将来,「生殖・発生毒性」を推測するための一つの有力な手段となりうるものと考えられた.今後,さらに文献調査を継続し,「生殖・発生毒性」の結果の予測に役立つEEGデータシートを構築してゆく予定である.  
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© 2009 日本毒性学会
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