日本トキシコロジー学会学術年会
第36回日本トキシコロジー学会学術年会
セッションID: P-43
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臓器毒性,代謝,毒性試験法等
ヒト肝細胞キメラマウス(PXBマウス)を用いたヒト薬物性肝障害発現の評価
*二宮 真一長塚 伸一郎大西 学ハインズ ダリナ加国 雅和立野 知世島田 卓山添 康
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抄録

目的】近年、ラットを用いたトキシコゲノミクス解析による薬物の毒性評価が注目されている。我々は肝実質細胞の70%以上がヒト型に置換された高置換ヒト肝細胞キメラマウス(PXBマウス)を用いたトキシコゲノミクス解析を検討し、種差の比較を行ってきた。PXBマウス肝ではヒト薬物代謝酵素が高レベルで発現しており、種々の薬物において代謝や排泄のパターンがヒト型を示すことが知られている。したがって、PXBマウスはヒトの薬物体内動態推定のためのモデル動物としてだけでなく、ヒト型の薬物代謝に起因する毒性、特に肝毒性発現を評価するために有用なモデル動物であると考えられる。我々はヒトにおいて肝毒性を示した16種類の薬物および7種類の非肝毒性薬物をPXBマウスに投与し、肝臓の遺伝子発現変動を解析することにより、ヒトにおける薬物性肝障害の発現予測を試みた。また、ラットを用いて同様の解析を行い、両者の結果を比較した。 【方法】7週齢のSDラットもしくは13~14週齢のPXBマウスに種々の薬物をLD50の約20~25%の投与量で3日間連続経口投与した後、最終投与の24時間後に肝臓のTotal RNAを調製し、Affymetrix社のGeneChip Rat Genome 230 2.0アレイもしくはHuman Genome U133 Plus 2.0アレイにより肝臓の遺伝子発現を測定した。ヒト肝毒性薬物において特徴的に変動する遺伝子を抽出し、これらの遺伝子の発現変動値を用いてスコア法によるヒト肝毒性予測を試みた。 【結果および考察】肝細胞壊死や肝炎などの急性症状、および脂肪沈着や胆汁うっ滞などの慢性症状のそれぞれについて最適化したマーカーを用いた結果、PXBマウスではヒト肝毒性薬物と非肝毒性薬物を完全に分別可能であった。スコア法の構築に用いた16種類のヒト肝毒性薬物とは別の8種類のヒト肝毒性薬物について評価した結果も正しかった。一方、ラットによる評価系ではヒト肝毒性薬物を非肝毒性と判定するケースが見られた。

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© 2009 日本毒性学会
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