日本トキシコロジー学会学術年会
第36回日本トキシコロジー学会学術年会
セッションID: P-46
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臓器毒性,代謝,毒性試験法等
カニクイザルにおけるISCEVプロトコールに準じたERGの有用性
*和田 聰根岸 剛加門 正光中村 英人涌生 ゆみ大竹 誠司
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キーワード: 網膜電図, カニクイザル
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抄録

【目的】網膜電図(ERG)記録は網膜機能検査の1つであり,薬剤誘発性網膜障害の評価系として有用である.国際臨床電気生理学会(ISCEV)が推奨している5種の応答(Rod ERG,Standard combined ERG,Oscillatory potentials,Single-flash Cone ERG,30Hz flicker ERG)により網膜の障害部位を推測する事が可能とされているが,カニクイザルでの報告例は少ない.今回,網膜障害を起こす事が知られているヨウ素酸ナトリウム(SI)をカニクイザルに投与しISCEV推奨ERGの有用性を評価した.【方法】4~5歳の雄カニクイザル4匹(2匹/群)にSI(20,40mg/kg)を単回静脈内投与し,投与前,投与後6,24,72,144または404時間にERGおよび眼底検査を行った.また,投与後144または404時間の検査終了後に病理組織検査を行った.ERGはLED内蔵コンタクトレンズを使ってISCEV推奨ERGを記録した. 【結果】20mg/kg投与群では眼底検査,ERGおよび病理組織検査で異常は認められなかった.40mg/kg投与群では眼底検査で異常は認められなかったが,ERGは投与後6時間から桿体応答であるRod ERGの振幅の大幅な低下が認められ,投与後72時間に他の4応答においても振幅の低下が認められた.しかし,投与後408時間に各応答の回復性が認められた.病理組織検査では投与後144時間の検査終了後に剖検を行った1例で色素上皮細胞の過形成が認められたが,投与後408時間の検査終了後に剖検を行った1例では異常は認められなかった.【考察】サルにおいてヨウ素酸ナトリウムで誘発された網膜障害はERGによって検出可能であり, ISCEV推奨ERGを行うことで桿体応答から障害が誘発されることが示された.このことからISCEV推奨ERGは網膜障害をより早期かつ鋭敏に検出可能であり,安全性試験に有用である事が示された.

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© 2009 日本毒性学会
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