主催: 日本トキシコロジー学会
ミニブタは、医薬品などの毒性試験においてイヌ、サルとともに非げっ歯類の動物種として活用されている。一方、ミニブタの上皮小体は、他の動物種と異なり、胸腺に埋没した状態で存在することが多く、解剖の際に肉眼的に同定することが困難であるとともに、組織学的にも検出できない場合がある。毒性試験を遂行する上では上皮小体の評価が必要なため、確実に病理学的評価を行うための上皮小体の採取ならびに標本作製法を検討した。【材料・方法】5~7ヶ月齢のミニブタ(CSK Miniature Swine)を雌雄各4例使用した。剖検時に、総頚動脈から分岐する血管の胸腺への付着部を目安として、上皮小体を肉眼的に確認した。肉眼的に同定された場合、上皮小体をマーキングした後に採取・固定を行い、組織標本を作製した。肉眼的に同定されなかった場合は、総頚動脈からの分岐血管が胸腺に付着している箇所をマーキングした後に頚部胸腺の先端部分を採取・固定し、組織標本を作製した。【結果・考察】肉眼的に左右いずれかの上皮小体を同定できた個体は3/8例であった。肉眼的に同定された個体では、組織学的にも胸腺表層に位置する上皮小体を観察できた。肉眼的に同定できなかった5例のうち3例では、組織ブロックを切り進めることで、胸腺組織に埋没する上皮小体を組織学的に観察できた。他の2例では組織ブロックを切り進めるたが、上皮小体を組織学的に同定することはできなかった。最終的に本検討では6/8例(75_%_)で上皮小体の組織学的観察が可能であった。その後、上記方法を用いた上皮小体の採取・標本作製を反復投与毒性試験に応用したところ、技術的な習熟もあり、全例の上皮小体の組織学的観察が可能であった。以上より、本法を用いることによって高率に上皮小体を検出することが可能となり、ミニブタの上皮小体の病理学的評価を実施する上で有用な採取・標本作製法であることが明らかとなった。