日本トキシコロジー学会学術年会
第36回日本トキシコロジー学会学術年会
セッションID: P-48
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臓器毒性,代謝,毒性試験法等
p53R2遺伝子発現に基づくヒト細胞遺伝毒性試験法(第6報)
*大野 克利溝田 泰生東 幸雅仲野 茂山田 敏広
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抄録

様々な化学物質や食品添加物などの発がん性リスクを評価するうえで、遺伝毒性試験の情報は重要である。Ames試験や哺乳類細胞を用いるin vitro遺伝毒性試験に比較して、ヒトへの外挿性に優れ、操作性や判定が容易な遺伝毒性試験法の開発を目的とし、DNA損傷時p53の結合により発現調節されるDNA修復遺伝子p53R2の発現に基づくヒト細胞を用いた遺伝毒性試験法を構築した(NESMAGET)。本試験系は、ヒト培養細胞(主にMCF-7)を用いたp53R2発現に基づくレポータージーン試験であり、特長として、様々なDNA損傷様式を検出可能、DNA二本鎖切断に対する反応性が高く、96穴プレートを使用しスループットが高く、少量の検体で試験可能、様々なヒト由来細胞に適用可能、などが挙げられる。今回、当試験法の応用検討として、以下の項目について検討したので報告する。(1)p53R2遺伝子とは異なるp53結合配列を持つ遺伝子の適用性検討:DNA損傷時にp53依存的に発現調節されるアポトーシス調節遺伝子p53AIP1の転写調節部位を含むルシフェラーゼレポータープラスミドを構築した。これをMCF-7細胞に一過的に導入し、検体添加24時間後、ルシフェラーゼ試験を行い、p53R2の転写調節部位を用いる従来法と比較した。その結果、p53AIP1を用いた場合、B[a]PやMMCなどに対する反応性が弱く、p53R2を用いる従来法の方が遺伝毒性物質の検出に優れていることを確認した。(2)ヒト正常細胞の適用性検討:ヒト正常皮膚細胞NB1RGB細胞にp53R2の転写調節部位を含むルシフェラーゼレポータープラスミドを導入し、レポータージーン試験を実施した結果、MCF-7細胞を用いる従来法に比べやや反応性は低いものの、従来法と同様に遺伝毒性物質を検出できることを確認した。よって、本試験法は、ヒト正常細胞にも適用できることが示唆された。(参照) K. Ohno et al., Mutat.Res. 588,47-57(2005). K. Ohno et al., Mutat.Res. 656,27-35(2008).

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© 2009 日本毒性学会
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