日本トキシコロジー学会学術年会
第36回日本トキシコロジー学会学術年会
セッションID: P-49
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臓器毒性,代謝,毒性試験法等
ウサギを用いた点滴液の末梢静脈障害性試験における病理組織標本採取時期の検討
*桑原 孝金田 信也河野 えみ子阿南 節子
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抄録

【目的】末梢静脈点滴液の局所障害性試験として、ウサギ耳介静脈を用いた血管障害性試験が一般的に用いられている。血管障害性の評価は、投与静脈を含む周辺組織の病理組織学的検査により実施されるが、適切な標本採取時期について検討した報告はない。そこで、物理化学的な細胞障害性を有する栄養輸液と、薬理学的な細胞障害性を有する抗癌剤について、適切な標本採取時期について検討した。 【方法】栄養輸液としてはプラスアミノ(2.7%アミノ酸・7.5%ブドウ糖・電解質液)を用い、ウサギ耳介静脈内に10 mL/kg/hrの速度で6時間投与した。抗癌剤としては、生理食塩液で希釈したビノレルビン(0.6 mg/mL) を5 mL/kg/hrの速度で30分間、またはドキソルビシン (1.4 mg/mL)を3 mL/kg/hrの速度で60分間投与した。投与終了後1日、2日、3日または7日に投与静脈を含む標本を採取、常法によりHE標本を作製し病理組織学的に検査した。 【結果】プラスアミノ投与では、1日後採取標本で「静脈内皮細胞の消失」、「炎症性細胞の滲出」等の静脈炎所見が最も明確に観察され、7日後には所見は全くみられなかった。一方、ビノレルビン投与では、1日後採取標本ではほとんど障害性所見がみられず、2日後採取標本で特徴的な所見である「表皮の変性」が明確に観察された。ドキソルビシン投与では、1日及び2日後採取標本ではほとんど障害性所見がみられず、3日後以降に特徴的な所見「軟骨細胞の壊死」を含む障害性が観察された。 【結論】これらの結果から、栄養輸液など物理化学的性状から障害性を有する点滴液の評価には、標本採取時期は1日後が妥当であると考えられた。しかし、薬理学的細胞障害性が予測される点滴液については、標本採取時期や特徴的な所見を探る予備検討を実施した後、適切な試験条件で評価する必要があると考えられた。

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© 2009 日本毒性学会
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