主催: 日本トキシコロジー学会
【背景・目的】高齢者は若年者に比べ薬物有害作用の発生が多く,問題となっている.その要因として,薬物の代謝能低下などが挙げられている. SAMP8は,老化促進モデルマウスであり,その老化促進は酸化ストレスにより引き起こされるといわれている. 酸化ストレス防御系の遺伝子発現調節に関与していると考えられているNrf2という転写因子がある.SAMP8は,酸化ストレス防御系の遺伝子発現が減弱しており,それにより生体が酸化に傾いている状態にあると仮定している.そしてNrf2は,一部の薬物代謝型CYPの発現にも関与しているという報告がある. この背景に着目し,SAMP8は一部の薬物代謝型CYPの発現も低下を起こしており,高齢者の薬物代謝能低下モデルに利用することが可能ではないかと考えた.またSAMP8における他の薬物代謝型CYPの発現の低下も調べることで,よりその可能性を検証出来ると考え,本検討を行った. 【方法】C57BL/6(8週齢),SAMP8(13週齢)及びSAMR1(13週齢)にそれぞれtBHQを腹腔内投与した.3日目の投与約24時間後,エーテル麻酔下で採血を行い,肝臓を摘出した.血清は抗酸化能測定に用い,肝臓は超遠心分離によりミクロソームを分画し,CYPタンパク発現量(CYP1A2,CYP2B,CYP2C,CYP2E1,CYP3A)をWestern Blotting法により確認した. 【結果】血清中抗酸化能は,SAMP8で他の系統に比べ低下が確認された.これにより酸化ストレスの状態にあると考えられた.肝臓中CYPタンパク発現量は,系統の違いによる差が見られた.