日本トキシコロジー学会学術年会
第36回日本トキシコロジー学会学術年会
セッションID: P-62
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優秀研究発表賞応募演題
短期発がん性予測システムのSDラットへの適用性
*齋藤 文代松本 博士横田 弘文美濃部 安史矢可部 芳州
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抄録

【背景及び目的】我々はこれまでに計94化合物をF344ラットに28日間反復投与し、肝臓の遺伝子発現データから短期の発がん性予測システム(CARCINOscreenTM)を構築した。本研究では開発したCARCINOscreen(TM)のSDラットへの適用性を調べるために9化合物をSDラットに投与し、肝臓における遺伝子発現データを取得した。また、F344ラットとSDラットの系統差についても検討した。 【方法】5週齢雄Crl:CD(SD)ラットに9化合物(媒体、低及び高用量)を28日間連続強制経口投与した後、肝臓を採材し、カスタムアレイ(ToxArrayIII)を用いて遺伝子発現解析を行った。得られたデータを短期発がん性予測システムに供して発がん性予測を行った。一部の化合物については系統差を検討するためにAgilent社Whole Rat Genome Arrayを用いた遺伝子発現解析を行った。 【結果と考察】動物試験の結果、9物質についてはF344ラットとSDラットで毒性に大きな差はみられなかった。SDラット肝臓における遺伝子発現データを短期発がん性予測システムで予測した結果、9物質中8物質については発がん性既知情報と一致し、本予測システムがSDラットにおいても高い予測性を示すことが分かった。また、媒体対照群のF344ラットとSDラットの遺伝子プロファイルを比較した結果、高い相関性(R2=0.97)を示したものの、系統間で2倍以上の差を示す遺伝子は数千個あり、さらにThioacetamide投与群では媒体対照群に対して有意に変動した遺伝子群の重なりは系統間で約80%と系統差を示す遺伝子群が認められた。しかし、発がん性予測に用いた遺伝子セットはこれら系統差のある遺伝子群には含まれておらず、発がん過程に普遍的であることが示唆された。

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© 2009 日本毒性学会
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