日本トキシコロジー学会学術年会
第36回日本トキシコロジー学会学術年会
セッションID: P-63
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優秀研究発表賞応募演題
ラット血液における肝毒性由来遺伝子マーカー候補の探索
*神吉 将之中津 則之山田 弘漆谷 徹郎大野 泰雄
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キーワード: 肝毒性, マーカー遺伝子
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抄録

【目的】ヒトでの肝毒性を早期に検出あるいはモニターするためには,血液などの非侵襲性サンプルの使用が望まれる。TGP2血液ゲノミクスワーキンググループでは,血液中のヒト肝毒性マーカー遺伝子の同定を目的として,肝毒性を惹起する薬剤を投与したラットの血液を用いて網羅的遺伝子発現解析を実施し,血液中の肝毒性マーカー遺伝子の探索を試みた。 【方法】ヒトで肝障害の報告があり,ラットでは肝細胞壊死の惹起が報告されているチアオセトアミド,メタピリレン,クマリン,ブロモベンゼンをCrl:CD(SD)ラットにそれぞれ単回および反復経口投与し,単回投与後3,6,9,24時間および3,7,14,28日間反復投与後に剖検を実施した。RNA抽出用血液はPreAnalytiX社 Paxgene Blood RNA採血管に採取し,キアゲン社Paxgene Blood RNA Kitを用いてRNAを抽出した。抽出したRNAはAmbion社GLOBINclear KitによりグロビンmRNAを除去後,Affymetrix社 Rat Genome 230_2.0 Gene Chipを用いて遺伝子発現データを取得し,肝機能パラメータおよび肝臓組織所見との関連を調べた。 【結果】AST, ALT値の増加および肝細胞の壊死が単回投与6時間後および3日間反復投与後から認められ,特に高用量群においてより明確な変化が認められた。遺伝子発現解析の結果,4薬剤共通で変動を示す遺伝子が単回投与後で約30遺伝子,反復投与後で約880遺伝子が抽出され,これらの中には肝細胞壊死や炎症反応との関連が報告されている遺伝子が複数含まれていた。本検討により抽出された変動遺伝子セットは,肝細胞壊死を非侵襲的に検出あるいはモニターできる可能性があり,現在肝細胞壊死のマーカー遺伝子としての妥当性を確認する為の検討を進めている。

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© 2009 日本毒性学会
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