日本トキシコロジー学会学術年会
第36回日本トキシコロジー学会学術年会
セッションID: P-65
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優秀研究発表賞応募演題
トキシコゲノミクスによる薬剤誘発性腎尿細管障害の予測マーカーの探索
*箕輪 洋介上原 健城近藤 千晶中津 則之奥野 恭史小野 敦五十嵐 芳暢丸山 敏之加藤 育雄山田 弘大野 泰雄漆谷 徹郎
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抄録

薬剤誘発性腎障害は,創薬において最も注意すべき副作用の一つである.従って,創薬研究の初期段階に,医薬品候補化合物の腎障害誘発リスクをいち早く見極め,安全な化合物を効率的に選び出すことが肝要である.今回,トキシコゲノミクス・インフォマティクスプロジェクトにおいて構築された大規模トキシコゲノミクスデータベース(TG-GATEs)を使用して,単回投与毒性試験において活用可能な薬剤誘発性腎尿細管障害の予測マーカーの探索を実施した.【方法】6週齢の雄性ラットに,種々の化合物(低,中,高用量)を1日1回,最長28日間反復投与し,投与開始後,1,4,8,15,29日目に屠殺した.採取した腎臓の病理検査を実施すると共に,Affymetrix社製のGeneChipを用いて網羅的遺伝子発現解析を実施した.【結果】反復投与時(投与後4 から29日目)の病変の有無によりアンカリングした投与後1日目の遺伝子発現データ(10/14化合物が単回投与後翌日の時点では病変なし)に対してfilter-typeの遺伝子選択法を適用し,マーカー候補遺伝子(feature gene)を抽出した後,これを用いて線形判別器を構築した.5-fold cross validationによる判別精度検証を実施した結果,偽陽性率が約10%のとき,検出力は約93%となった.feature geneには,Kim1,Timp1,Clusterin等良く知られた既知の腎尿細管障害マーカーに加え,新規のマーカー候補遺伝子も幾つか含まれていた.また,これらの既知マーカーを単独で判別に用いた時の予測精度と比較して,今回構築した複数個の遺伝子を用いた判別器で大幅に高い予測精度が得られた.【結論】今回構築した腎毒性の判別モデルは,薬剤誘発性腎尿細管障害の有無を早期に予測する有用な手段になり得ると考えられた.

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© 2009 日本毒性学会
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