日本トキシコロジー学会学術年会
第36回日本トキシコロジー学会学術年会
セッションID: P-67
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優秀研究発表賞応募演題
内分泌撹乱物質o,p’-DDTが肝臓遺伝子発現プロファイルおよび血中性ホルモン動態に及ぼす影響の種差に関する検討
*清澤 直樹Joshua C KwekelLyle D BurgoonTimothy R Zacharewski
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キーワード: DDT, 肝臓, マイクロアレイ
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抄録

【目的】殺虫剤DDTにはげっ歯類肝腫瘍プロモーション活性が報告されており、またo,p’-DDTに関してはエストロゲン受容体(ER)結合を介したエストロゲン様活性による内分泌撹乱作用が報告されているものの、詳細な分子機作には不明な点が多い。本試験ではo,p’-DDTがラットおよびマウス肝臓に及ぼす影響を網羅的遺伝子発現解析により精査し、その毒性学的意義を考察した。 【方法】生後25日齢雌性SDラットおよびC57BL/6マウスに対して300 mg/kgのo,p’-DDTを単回強制経口投与後2、4、8、12、18および24時間後、あるいは一日一回強制経口投与を3日間行い、最終投与24時間後に血液および肝臓を採取した。マイクロアレイ解析により肝臓遺伝子発現プロファイルを、GC-MS解析により肝臓o,p’-DDTレベルを、ELISAにより血中Dehydroepiandrosterone(DHEA)レベルを、またウエスタン解析により肝臓CYP17A1タンパク質レベルをそれぞれ確認した。 【結果と考察】ラット、マウス共に肝臓o,p’-DDTレベルは投与後2時間後に高値を示した後、速やかに低下した。ラット、マウス共に肝重量増加が認められたものの、病理組織学的には目立った所見は観察されなかった。ラット肝臓では核内受容体PXR/CAR活性化(Cyp2b、Cyp3a遺伝子発現誘導等)が示唆され、フェノバルビタール型腫瘍プロモーション作用が示唆された。一方マウス肝臓では、PXR/CAR活性化に加えてCyp17a1遺伝子とCYP17A1タンパク質の発現誘導、およびCYP17A1により生合成される血中DHEAレベル上昇が観察された。Cyp17a1誘導および血中DHEAレベル上昇には時間的な相関が認められたことから、マウスにおいては肝Cyp17a1誘導を介した性ホルモン動態への影響が、o,p’-DDTによる内分泌撹乱作用の機作の一つである可能性が推察された。

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© 2009 日本毒性学会
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