日本トキシコロジー学会学術年会
第36回日本トキシコロジー学会学術年会
セッションID: P-68
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優秀研究発表賞応募演題
CYP1A2およびCYP2E1発現アデノウイルスを用いた薬物誘導性肝障害の評価
*豊田 泰之深見 達基中島 美紀横井 毅
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抄録

【目的】薬物誘導性肝障害は今日の医薬品開発および臨床における主要な問題の一つである。その発症メカニズムとして、チトクロムP450による代謝的活性化、すなわち反応性代謝物の生成が挙げられる。本研究では、薬物代謝において主要な役割を担っている分子種CYP1A2とCYP2E1をターゲットとして培養細胞を用いた評価系を構築し、副作用として肝障害の報告がある15種類の薬物の代謝的活性化について明らかにすることを目的とした。
【方法】CYP1A2およびCYP2E1発現アデノウイルス(AdCYP1A2とAdCYP2E1)を作成し、解毒酵素の発現誘導を制御している転写因子Nrf2をsiRNAにより発現抑制させたヒト肝癌由来HepG2細胞に感染させ、肝障害の報告がある薬物とともにインキュベートし、ミトコンドリア内脱水酸化酵素活性およびATP産生量を測定することにより細胞生存率を測定した。
【結果および考察】AdCYP1A2感染siNrf2処置HepG2細胞にアセトアミノフェン、トルカポンおよびレフルノミドを処置することにより有意な細胞生存率の低下が認められた。AdCYP2E1感染siNrf2処置細胞においてもアセトアミノフェンとトルカポン処置により有意な細胞生存率の低下が認められ、さらにフルタミド処置によっても細胞生存率の低下が認められた。siNrf2の代わりにネガティブコントロールとしてsiScrambleを処置した細胞ではこれらの薬物による細胞生存率の低下は減弱された。アセトアミノフェンとトルカポンはCYP1A2およびCYP2E1により代謝的活性化を受けることが示唆されており、本研究結果と一致した。またCYP1A2またはCYP2E1がレフルノミドおよびフルタミドの毒性に関与する可能性が本研究において新たに見出され、これらの薬物による毒性の解毒機構にNrf2が関与していることが明らかとなった。本試験系は薬物誘導性肝障害の予測の有用な手段となることが示された。

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© 2009 日本毒性学会
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