日本トキシコロジー学会学術年会
第36回日本トキシコロジー学会学術年会
セッションID: P-69
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優秀研究発表賞応募演題
CYP2C9発現アデノウイルスを用いた薬物誘導性肝障害の評価
*岩村 篤深見 達基細見 浩子中島 美紀横井 毅
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抄録

【目的】薬物誘導性肝障害は今日の医薬品開発および臨床における主要な問題の一つである。その発症メカニズムとして、チトクロムP450による代謝的活性化が挙げられる。本研究では、薬物代謝において主要な役割を担っている分子種CYP2C9をターゲットとして培養細胞を用いた評価系を構築し、副作用として肝障害の報告がある10種類の薬物の代謝的活性化について明らかにすることを目的とした。
【方法】CYP2C9発現アデノウイルス(AdCYP2C9)を作成し、解毒酵素の発現誘導を制御している転写因子Nrf2をsiRNAにより発現抑制させたヒト肝癌由来HepG2細胞に感染させ、肝障害の報告がある薬物とともにインキュベートし、ミトコンドリア内脱水酸化酵素活性およびATP産生量を測定することにより細胞生存率を測定した。CYP2C9による解毒についても解析するため多くの薬物の代謝的活性化を担うCYP3A4発現アデノウイルス(AdCYP3A4)とともにAdCYP2C9を感染させ、同様に細胞生存率を測定した。
【結果および考察】AdCYP2C9感染HepG2細胞にベンズブロマロン、チエニル酸、ジクロフェナク、ロサルタンおよびアミオダロンを処置することにより有意に細胞生存率の低下が認められた。また、チエニル酸とジクロフェナクについてはAdCYP3A4感染細胞においても有意に細胞生存率の低下が認められ、アミオダロンについてはAdCYP2C9とAdCYP3A4の同時感染により更なる細胞生存率の低下が認められた。ロサルタンとアミオダロンについてはCYP2C9による代謝的活性化の報告は無く、本研究においてCYP2C9の毒性に対する関与を新たに見出した。テルビナフィンはAdCYP3A4感染細胞において細胞生存率の低下が認められたが、AdCYP2C9との同時感染により細胞生存率の低下は認められなくなった。よって、CYP3A4により誘発される毒性はCYP2C9により減弱されることを見出した。本試験系は薬物誘導性肝障害の予測の有用な手段となることが示された。

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© 2009 日本毒性学会
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