日本トキシコロジー学会学術年会
第36回日本トキシコロジー学会学術年会
セッションID: P-71
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優秀研究発表賞応募演題
ヒト肝組織における薬物代謝の個人差―Ames試験と遺伝子発現プロファイルの関連
*端 秀子三木 康宏長崎 修治笹野 公伸
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キーワード: Ames試験, 肝臓, 薬物代謝酵素
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抄録

【目的】主に肝臓に発現している薬物代謝酵素は摂取された物質を生体にとって無害な形に変換して生体防御にあたっている。薬物代謝研究によく用いられている実験動物は、遺伝的背景が均一化されており、また薬物代謝酵素の発現パターンやその発現制御機構は種によって異なる為、ヒトへの影響を知る上で重要な個人差を考慮することが難しい。そこで本研究では、実際のヒト肝組織を用いてAmes試験を行い、また薬物代謝酵素の発現の個人差について剖検・手術標本を用いて比較検討した。 【方法】当分野で凍結保存している0歳~82歳の肝組織23例からS9を採取してAmes試験に用いた(東北大学医学部倫理委員会承認済)。TA98およびTA100株を使用し、被験物質は2-Aminoanthracene (2-AA)、Benzo[a]pyrene (B[a]P)およびAcrylamideを用いた。また同症例のホルマリン固定パラフィン包埋標本からHE染色標本を作製し、病変の有無(脂肪肝、線維化)を確認し、免疫組織化学にてCytochrome P450を評価した。さらに肝組織からRNAを抽出し、マイクロアレイおよび定量的PCRにて解析を行った。Ames試験および病理学的所見の結果と各遺伝子の発現プロファイルの個人差の比較検討を行った。 【結果および考察】Ames試験の結果、Acrylamideはすべての症例において陰性であったのに対し、2-AAおよびB[a]Pは個人差が見られた。免疫組織化学においてもその局在に個人差が見られた。また、マイクロアレイ解析および定量的PCRの結果、Ames試験にて2-AAおよびB[a]P陰性症例は、これらの代謝活性に関与するCYP1Aの発現が低い傾向が見られた。このように実際のヒト組織を用いてその発現プロファイルや個人差を明らかにすることは重要と考えられる。現在さらに例数を増やし比較検討中である。

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© 2009 日本毒性学会
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