日本トキシコロジー学会学術年会
第36回日本トキシコロジー学会学術年会
セッションID: P-72
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優秀研究発表賞応募演題
ラットAdjuvant 関節炎発症過程における肝薬物代謝酵素発現の変動
*真田 尚和関本 征史根本 清光出川 雅邦
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抄録

【目的】ラットを用いたAdjuvant関節炎モデルは、炎症性サイトカインの過剰産生に加え、局所的な反応(1次反応)に続いて全身性の反応(2次反応)が誘発されることから、ヒト慢性関節リウマチのモデルとして用いられている。このような炎症モデル動物では、薬物代謝酵素の発現が変動し、医薬品の体内動態が変化する可能性がある。そこで、本研究では、ラットAdjuvant 関節炎モデルの発症過程における、薬物代謝酵素(CYP3A1、CYP2B2)並びにそれらの遺伝子発現を調節する核内受容体(PXR、CAR)の発現変動を検討した。 【方法】雄性Lewisラットのfoot padにM. tuberculosis/liquid paraffin 0.1 mlを投与することで、Adjuvant関節炎を誘発させ、各誘発過程(投与1、4、7、12、17及び25日後)における肝臓を採取した。各時期の肝臓からRNAを抽出し、cDNAに変換後、各種遺伝子(CYP3A1, CYP2B2, PXRおよびCAR) の発現量をそれぞれリアルタイムPCR法により測定した。 【結果】CYP2B2及びCARは、Adjuvant関節炎誘発全過程を通じて発現が低下し、その低下は特に1次反応及び2次反応が認められる投与1日後及び12日後で顕著であった。CYP3A1の発現は、投与1日後から急激に減少し、その減少は25日まで継続した。一方、PXRの発現は投与1日後に一過的に減少したに過ぎなかった。 【考察】本Adjuvant関節炎誘発過程において、CYP2B2CARとは類似の発現変動パターンをとることから、CYP2B2発現の低下はCARの発現減少に起因することが示唆された。一方、CYP3A1PXRの発現には相関は認められず、CYP3A1の発現低下はPXR以外の因子により制御されていることが示唆された。

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© 2009 日本毒性学会
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