日本トキシコロジー学会学術年会
第36回日本トキシコロジー学会学術年会
セッションID: P-73
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優秀研究発表賞応募演題
ラットにおけるアセトアミノフェン誘発肝毒性に及ぼす妊娠の影響
*浦底 嘉仲鷹野 正生伊差川 由里渡邊 章仁澤畑 延寿出野 悦子松澤 蘭高田 直祥中村 大地脇田 篤枝元 洋小林 淳一赤井 弘幸池谷 政道
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抄録

[目的]妊娠動物では妊娠の経過に伴い種々の生理学的パラメータが変動することが知られており、我々は、第34回本学会においてラットの妊娠経過に伴う血液及び血液化学パラメータの変動について報告した。アセトアミノフェン(APAP)は解熱鎮痛薬で、風邪薬などの一般用医薬品に含まれおり、多量に摂取するとCYP2E1による代謝産物が肝障害を誘発することが知られている。我々は今回、妊娠末期ラットにAPAPを投与し、検索した。[方法]14~15週齢のCrl:CD(SD)妊娠ラットを用い、妊娠17~19日にAPAP (1000 mg/kg/day)を強制経口投与した。妊娠20日にエーテル麻酔下で腹大動脈から採血して血液化学検査を実施した。また、肝臓を摘出してホルマリン固定後、病理組織学的検査を実施した。さらに、妊娠17及び19日に血漿内薬物濃度を測定した。対照動物として同様の処置をした非妊娠動物を用いた。[結果]血液学的検査では、妊娠動物ではAPAP投与による影響は認められなかったが、非妊娠動物では個体によってASTが高値を示した。肝臓の病理組織学的検査においては、妊娠動物では病変は全く認められなかった。一方、非妊娠動物の肝臓では約半数の個体で小葉中心性の肝細胞壊死と細胞浸潤が認められたが、その程度には個体差がみられた。なお、APAPの血漿内薬物濃度は妊娠動物と非妊娠動物の間に有意差は認められなかった。[考察]妊娠末期ラットでは、非妊娠ラットとは異なり、APAPによる肝毒性は認められなかった。これは、妊娠末期ラットの肝臓ではCYP2E1の発現が半減する(He et al., 2005)ことを反映しているものと推察された。

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© 2009 日本毒性学会
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