日本トキシコロジー学会学術年会
第36回日本トキシコロジー学会学術年会
セッションID: P-77
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優秀研究発表賞応募演題
ラット腎障害モデルにおける尿中Albumin, Kim-1, Clusterin測定の有用性
*永山 裕子関戸 徹桃澤 由妃田中 春樹桂川 永美子江崎 健堀 宏行藤川 康浩菅沼 彰純青木 豊彦
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抄録

【目的】近年,EMEA/FDAにより腎障害を早期に把握するバイオマーカー(BM)として,7種類の尿中BMの有用性が示唆されたが,BMの変動と腎の病理組織学的変化を体系的に比較したデータは利用しうる状況にない。そこで,腎障害部位の異なる腎毒性物質,Puromycin aminonucleoside (PA), Cisplatin (CDDP)及びGentamicin (GM)をラットに単回及び7日間反復投与し,Kim-1, Albumin (ALB), Clusterin (CLU)を経時的に測定,腎病理組織像・臨床検査と比較検討し,その有用性を検討した。【方法】8週齢雄SDラット(5例/群)にsaline, PA 150 mg/kg(ip), CDDP 5 mg/kg(ip), GM 100 mg/kg(sc)を単回投与し,2, 4及び8日目に血液と22時間蓄尿を採取し8日目に剖検した。血液生化学検査,尿検査及び腎の病理組織学的検査を行うとともに,Kim-1, ALB, CLUの尿中排泄量をSector Imager 6000 (MSD社)で測定した。反復投与では,saline, PA 20, 40 mg/kg, CDDP 0.5, 2 mg/kg, GM 10, 50 mg/kgを7日間静脈内投与し,単回投与と同様に試料採取し測定した。【結果,考察】糸球体を障害するPAでは,単回及び反復投与に関わらず,4日目にALBが上昇し,近位尿細管上皮に病変が波及した8日目にはKim-1, クレアチニンが上昇した。一方,近位尿細管を障害するCDDPの単回投与では,2日目にKim-1の上昇,4日目にBUN, クレアチニン, ALBが上昇した。反復投与の低用量では,Kim-1のみが4日目に上昇し,高用量では単回投与の変化に加え4日目にCLUも上昇した。近位尿細管を障害するGMの単回投与では腎毒性は発現せず,反復投与の高用量で軽度の尿細管障害がみられたが,8日目にKim-1及びCLUが上昇傾向にあった。Kim-1は近位尿細管上皮に,CLUは尿細管全体に分布しており,ALBは糸球体機能に関係しているが,今回の検討で,障害部位によってBMが古典的な臨床病理検査に先立って変動することが示された。

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© 2009 日本毒性学会
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