日本トキシコロジー学会学術年会
第36回日本トキシコロジー学会学術年会
セッションID: P-78
会議情報

優秀研究発表賞応募演題
新規ミトコンドリアDNA損傷の簡易解析法の開発
*小野寺 章荻田 郁弥柏村 麻子吉田 恵堤 康央伊藤 徳夫
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

【目的】ミトコンドリアは、化学物質を含めた各種ストレスの標的になりやすく、ミトコンドリアDNA (mtDNA)の8-oxo-guanine蓄積量は、核DNAの数倍から数十倍と言われている。mtDNAの安定性低下は、発がんや老化のみならず、各種疾患の原因とされ、化学物質がこれらの加速因子として作用することが指摘されている。しかし、化学物質による細胞傷害とmtDNAの安定性がどのように関わっているのかに関しては、未だ不明な点が多い。すなわち、1つのミトコンドリアにはmtDNAが複数コピー存在し、細胞全体では数千コピーにも及ぶ、仮にその中のいくつかに変異があったとしても、残りの正常なmtDNAがその働きを補うため、mtDNAを標的とする解析が困難とされている。このため、細胞傷害とmtDNAの関連は、mtDNA損傷の定量的な解析を基に、化学物質の暴露から毒性発現に至る一連の過程を検討することが望まれる。そこで本研究では、mtDNA損傷の簡便な評価法の確立を行い、アルキル化剤N-Methyl-N'-Nitro-N-Nitrosoguanidine(MNNG)をモデルに、mtDNAのアルキル化損傷に関する解析を行う。【方法】mtDNAのアルキル化損傷は、アルキル化DNA感受性制限酵素Pst I、mtDNA損傷部位特異的プライマー、real time PCR法を用いた新規mtDNA損傷の簡易解析法により行った。【結果・考察】Balb/c 3T3細胞を用いた解析から、MNNG暴露によるmtDNAの増加、すなわち、mtDNA損傷部位特異的プライマーによる増幅が確認された。これは、MNNGの標的としてmtDNAが損傷を受けることを示唆している。現在、MNNG暴露から細胞がん化に至る一連の課程において、mtDNAの安定性がどのように関連しているのについて、活性酸素種の産生、細胞老化、アポトーシスに注目し、検討中である。

著者関連情報
© 2009 日本毒性学会
前の記事 次の記事
feedback
Top