日本トキシコロジー学会学術年会
第36回日本トキシコロジー学会学術年会
セッションID: P-79
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優秀研究発表賞応募演題
Tocotrienol投与によるラット肝in vivo変異原性ならびにプロモーション作用の検索
*井上 知紀田崎 雅子石井 雄二岡村 俊也鈴木 裕太増井 則夫能美 健彦梅村 隆志西川 秋佳
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抄録

【目的】ビタミンE群の一つであるTocotrienol(TTE)は従来の変異原性試験では陰性を示すが、2年間混餌投与によりラット肝臓に弱いながら発がん性を有している。そこで今回、TTEの発がん機序解明を目的に、gpt deltaラットを用いたin vivo mutation assayならびにdiethylnitrosamine (DEN)をイニシエーターとした肝発がんプロモーション作用の検討を行った。【方法】実験1:雌6週齢のF344 gpt deltaラット各群6匹にTTEを2および4%の濃度で13週間混餌投与し、肝臓中のgpt遺伝子突然変異頻度(MF)解析を行った。その他、対照群には基礎飼料のみ、あるいはDEN 20 mg/kgを週1回、計13回腹腔内投与した。実験2:雌7週齢のWistar Hannoverラット各群25匹にDEN 200 mg/kgを単回腹腔内投与し、その2週後よりTTEを0.4、1および2%、phenobarbital (PB)を0.05%の濃度でそれぞれ6週間混餌投与した。実験開始後3週目に2/3肝部分切除を行い、実験期間8週で屠殺剖検後、GST-P陽性肝細胞巣の定量解析を行った。【結果】実験1:MFはDEN投与群で有意な上昇が認められたが、TTE投与群では有意な変化は認められなかった。実験2:PB投与によりGST-P陽性肝細胞巣の単位面積あたりの個数および面積の有意な上昇が認められたが、TTE投与群では変化は認められず、病理組織学的に結節性肝細胞過形成が認められた。【結論】本実験条件下ではラット肝におけるTTEのin vivo変異原性ならびに発がんプロモーション作用は認められなかった。結節性肝細胞過形成を構成する肝細胞は非常に高い細胞増殖活性を有していることから、長期間投与により生じるこのような過形成性病変の発がん過程への関与が示唆された。

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© 2009 日本毒性学会
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