抄録
【背景・目的】トキシコゲノミクス・インフォマティクスプロジェクト(TGP2)は国立医薬品食品衛生研究所、(独)医薬基盤研究所および製薬企業13社によって進められており、TGP第一期で取得した約150化合物のラット肝遺伝子発現データ及び関連する毒性学的データを用いて安全性バイオマーカーの探索を行っている.本発表では、TGPデータベースを用い、ストレス応答性転写因子Nrf2制御下遺伝子のラット肝における発現変化について報告を行う.
【方法】150化合物を投与開始時6週齢の雄性SDラットにそれぞれ単回および28日間反復投与を行い計8時点で肝臓を採取した.遺伝子発現解析には、Affymetrix GeneChip Rat 230 2.0を用いた.
【結果】文献情報に基づきNrf2制御下遺伝子のリスト化を行い、酸化ストレスの既知マーカー、グルタチオン代謝関連遺伝子、プロテアソーム構成遺伝子等を含む93プローブセットを解析対象とし、それらの発現変化が顕著であった単回投与後24時間のラット肝のGeneChipデータを用いて解析を行った.発現変化が大きい化合物には、フルタミドやクマリン、ニメスリド等、酸化ストレスや反応性代謝物の生成が報告されている化合物が含まれていた.また、ニメスリドのようにラット28日間反復投与試験では顕著な肝障害が認められなかったものの臨床では肝障害報告がある化合物についても、Nrf2制御下遺伝子は単回投与で大幅に変動していることから、Nrf2制御下遺伝子の発現変化を調べることにより酸化ストレスや反応性代謝物を介した肝障害リスクを短期で捉えることができる可能性が示唆された.