抄録
ICHではS2ガイドラインの改定作業が進行中であり,in vivo遺伝毒性試験(小核試験,コメットアッセイ)を一般毒性試験(2週間~4週間の反復投与毒性試験)の一試験項目として実施する組込み法の検討がなされている.一方,2~4週間の反復投与毒性試験に組込むことで最高用量が下がり,これまで,短期大量投与で実施していた遺伝毒性試験の感度が低下することが懸念されている.これらの問題をクリアし,さらに動物愛護の観点から使用動物数削減を達成するためには,2つの方法が考えられる.一つは一般毒性への組込み方法を改良し,遺伝毒性試験の検出感度を上げることであり,もう一つは短期大量投与による複数の遺伝毒性試験を同一動物を用いて評価する方法である.前者に関しては反復投与小核試験において終了剖検時の骨髄の評価に加えて,投与初期の末梢血の評価の評価や脾臓の病理検査を実施することで検出感度が上がることをこれまでに報告してきた.今回は3回投与による小核試験とコメットアッセイを同一動物で評価する方法について検討を行ったので報告する.検討した化合物はColchicine(5, 10 mg/kg/day),Ethyl methanesulfonate(50, 200 mg/kg/day),Mitomycin C(5, 20 mg/kg/day)で投与はサンプリングの3, 24, 48時間前の3回実施した.小核試験に関しては骨髄では全ての化合物で陽性となったが,末梢血ではColchicine のみ陰性となった.コメットアッセイではColchicine が全ての臓器で陰性となりEthyl methanesulfonate が全ての臓器で陽性となった.Colchicine は紡錘糸阻害剤であるため,DNA初期損傷を検出するコメットアッセイでは陽性にならないものと考えられた.これらの結果はそれぞれの試験を単独で実施した場合と同様の結果であり,3回投与法による小核試験とコメットアッセイのコンビネーション試験は検出感度も高く,使用動物数の削減にも貢献できる有用な方法であると考えた.