抄録
当施設で最近1年間に実施したカニクイザルの反復毒性試験に用いた対照群の精巣(136例)について,組織像から6種のグレードに区分
して精巣の成熟度について調べた。
グレード1(Immature)では,精細管にはセルトリ細胞と精祖細胞のみであり,管腔は未形成である。このグレードの精巣重量は0.7~
2.2gであり,年齢は16/24が4歳以下であり,体重もほとんど4kg以下であった。グレード2(Pre-pubertal)では,精細管に円形精子
細胞はみられるものの,全精細管は同様な像であり,精子形成サイクルはみられない。このグレードの精巣重量は1.7~4.0 gであり,
年齢は10/12が4歳以上であるが,体重はほとんど4kg以下であった。グレード3(Onset of puberty)では,Step19の精子細胞がみら
れるものの,細胞数は少なく,精巣上体には残渣が多い。精巣重量は3.5~7.6g,4歳以下は12/25例であるが,体重が4kg以下の動物
は約半数であった。グレード4(Pubertal)では精子形成発達がほぼ完了しており,精巣上体に精子は観察される。このグレードの精巣
重量は約8 g以上であり,4歳以下は2/19匹と少なく,体重が4 kg以下の動物も少なかった。精巣毒性評価は可能であるが,1群の全例
がこのグレードとなることは避けたい。グレード5(Early adult)は病理組織学的な精巣毒性評価には十分に適した動物である。このグ
レードでは,精巣重量は10.4~20.7 gで,4歳以下が2/34と極めて少なく,体重が4kg以下は6/34と少なかった。グレード6(Adult)
は最も成熟した動物であり,精巣上体の精子数も多く射出精子を用いた経時的な精巣毒性評価も可能であると判断する。このグレード
では,精巣重量は16.0~33.7gで,22例全例が4歳以上で4kg以上であった。
まとめ:精巣の病理組織学的成熟度と精巣重量には明確な相関がみられたが,年齢や体重との関連では個体差が大きく,実施する毒性
試験の目的に応じた動物の選別が必要である。