抄録
【目的】安全性試験において,骨髄評価は造血系への影響を検討する上で重要であるが,従来の骨髄塗抹標本による細胞分類は,十分な
トレーニング及び時間を要するものである。一方,フローサイトメトリー(FCM)法では,客観性の高いデータが短時間で得られるこ
とから,近年,骨髄検査への応用例が報告されている。今回,DNA染色蛍光色素であるLDS-751,赤芽球系細胞を識別するCD71抗
体,及び報告例の無い骨髄球系細胞を分類するSIRPα抗体を用いたFCM法によるラット骨髄細胞分類の可能性を検討したので報告す
る。【方法】骨髄は,雌雄Crl:CD(SD)ラットの左大腿骨より注射針を用いて吸引・採取した。その後,PBS中に浮遊させ,LDS-751
並びにFITC-SIRPα及びPE-CD71抗体で3色処理した。染色後の骨髄は,Guava EasyCyte(GEヘルスケア バイオサイエンス(株))
により測定・解析した。解析では,骨髄細胞よりLDS-751により有核細胞を抽出した後,SIRPα及びCD71抗体により4分画に分類
した。別途,骨髄塗抹標本による細胞分類を実施し,FCM法との結果と比較した。【結果】骨髄細胞はSIRPα抗体に陽性の骨髄球系細
胞,CD71抗体に陽性の赤芽球系細胞,及び両抗体に陰性のリンパ球系細胞に良好に分類された。また,両抗体に陽性の細胞が分類さ
れ,SIRPαは未熟段階の骨髄細胞にも発現することが知られていることから,赤芽球系の未熟細胞と推察された。この分類前にLDS-
751により有核細胞を抽出することにより目視による細胞分類の結果との間に高い相関が得られた。以上,LDS-751並びにSIRPα及
びCD71抗体を用いたFCM法による骨髄細胞分類が骨髄評価に有用である可能性が示された。今後,両抗体に陽性の細胞がどの成熟段
階の赤芽球系細胞であるか検討する必要があると考えられた。