抄録
【目的】近年,様々な物質により胎児が汚染されており,これによりアレルギー体質(食物アレルギー,アトピー性皮膚炎,じんま疹,
気管支喘息,アレルギー性鼻炎等)の子供が急増しているとの報告がある。そこで,我々は第36回日本トキシコロジー学会学術年会
(2009年)で「胎生期に卵白アルブミンにより感作されたラットのアナフィラキシー様症状」報告した。その報告では,F1が母乳を介し
て感作された可能性が示唆されたため,今回は母乳からの感作の有無を確認する実験系を組んでみた。
【方法】(実験1)無処置の雌雄ラット(Crl:CD(SD))を交配,分娩させ,これを里親ラットとした。同様に無処置の雌雄ラットを交配させ,
妊娠中の雌ラットを卵白アルブミン(OVA)・FCA(0.2 w/v %生理食塩液)の皮下投与で感作させた。感作雌ラットを分娩前日に帝王切
開(帝切)し,取り出したF1を里親ラットの下で飼育し,帝切後15日でF1動物並びに里親ラットにOVAの0.1 w/v %生理食塩液で惹起
を行い,母乳を介さずにF1が感作を受けているか否か検討した。(実験2)実験1と逆の実験系を組んでみた。すなわち,妊娠後の雌ラッ
トを実験1と同様にOVAで感作,分娩させ,感作里親ラットとした。無処置で交配させた雌ラットから,分娩前日に帝切によりF1を取
り出し,これを感作里親ラットの下で飼育させた。実験1と同様に,帝切後15日でF1動物並びに感作里親ラットに惹起を行い,母乳を
介した感作の有無を確認した。なお,両実験とも,惹起時の全身的アナフィラキシー症状を以下の評点で観察した。-:変化なし。+:
活動性低下。++:+に加え,呼吸緩除,腹式呼吸,チアノーゼ,横臥位及び腹臥位。+++:死亡。
【結果】実験1および実験2でF1動物にアナフィラキシー症状が確認され,F1動物が胎児期に感作を受けていることが示唆された。