日本トキシコロジー学会学術年会
第37回日本トキシコロジー学会学術年会
セッションID: P107
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一般演題 ポスター
ラット甲状腺二段階発がんモデルにおけるスルファジメトキシンの発がん促進により 誘発される被膜浸潤がんに対するラック色素及びコチニール色素の腫瘍修飾効果
*剣持 明川合 正臣三枝 由紀恵嶋本 敬介蓮見 惠司三森 国敏渋谷 淳
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抄録

【目的】我々は,ラット甲状腺二段階発がんモデルにおいて,スルファジメトキシン(SDM)の発がん促進により高率に誘発される被膜 浸潤がんの形成に,PTEN/Akt経路の活性化の関与を見出している。本研究では,被膜浸潤がん抑制の有効な分子標的を探索する目的 で,このモデルを用いて,カイガラムシ由来の赤色色素で,血漿ヒアルロナン結合蛋白質(PHBP)の活性化を阻害して組織プロテオリ シスを制御するラッカイン酸及びカルミン酸について,被膜浸潤がん形成に対する抑制効果の病理組織学的解析と発現変動遺伝子の網 羅的検索を行った。【方法】6週齢の雄性F344ラットにDHPNのイニシエーション処置をし,その1週後から1500 ppm SDMを13週間 飲水投与し,同時に5%ラック色素(ラッカイン酸76.6%)ないし3%コチニール色素(カルミン酸35.6%)を混餌投与した。【結果】体重 は,ラック色素及びコチニール色素併用群ともにSDM単独群と差はなかった。甲状腺相対重量は,ラック色素併用群でSDM単独群よ り低値を示したものの,コチニール色素併用群では差はなかった。被膜浸潤がんの発生数及び総面積(/動物)は,ラック色素併用群で はSDM単独群に比べて減少したが,1腫瘍あたりの面積には差がなかった。また,コチニール色素併用群では個数,面積に差はなかった。 甲状腺がんの肺への転移数は,ラック色素併用群では減少したが,コチニール色素併用群は差がなかった。マイクロアレイ解析において, SDM単独群と比べてラック色素併用群で有意に発現変動を示した44遺伝子の中に,Aktの下流に位置する分子(Akt1s1, Nkap, G0s2,cdk2, Tmprss11f等)を多数見出した。【考察】ラック色素のみで浸潤がんの浸潤性ではなく,発生数が抑制された。両物質ともpro- PHBPの自己活性化を抑制するが,ラック色素は活性型 PHBPを阻害することも知られており,今回観察されたラック色素の抑制効果 には,後者の阻害効果が関与することが示唆され,Aktないしその下流に存在する多数の機能分子を標的とする機序が推察された。

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© 2010 日本毒性学会
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