日本トキシコロジー学会学術年会
第37回日本トキシコロジー学会学術年会
セッションID: P106
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一般演題 ポスター
上皮細胞バリアに着目した食物アレルギーリスク評価
*渡利 彰浩近藤 昌夫八木 清仁
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抄録

周知のように,小児および成人の約10_%_が罹患していること,罹患期間は2~20年間の長期に渡ることから,食物アレルギーリスク の予測は安全な食生活の実現に向けた重要課題の一つである。とりわけ,食物の60_%_を輸入に頼っている我が国では,ほぼ全ての食 品に食品添加物が使用されており,食品添加物のアレルギー誘因性評価は喫緊の課題となっている。しかしながら,食品添加物の安全 性評価は,マウスやラットを用いた毒性試験や繁殖試験,催奇形性試験などが行われているのみである。
腸管粘膜は生体内外を隔てる障壁として機能していることから,食品中に含まれる腸管粘膜バリア阻害物質は食物アレルゲンの生体内 への流入を引き起こし,食物アレルギーの誘因になると考えられる。現在までに,膜タンパクのclaudin-4(CLDN4)が腸管バリアを担っ ていることが明らかにされているものの,CLDN4に着目した食の安全性評価研究は皆無に等しい。
そこで本研究では,CLDN4バリア阻害による食物未消化物流入の可能性を検証し,さらに迅速かつ簡便なCLDN4バリア機能評価系の 構築を試みた。まず,ラット腸管粘膜にCLDN4 modulatorを処理したところ,デキストラン(Mw 4-20 kDa)の腸管粘膜吸収が観察 された。このことは,CLDN4バリア制御分子が食物アレルギーの誘因になることを示唆している。現在のところ,CLDN4バリア機能 の解析系としては,24穴プレートを使用し,2週間程度の日数を要するロースループット系しか存在していない。そこで,CLDN4発 現をレポーター遺伝子によりモニター可能なハイスループット解析系(最大384穴,1日間で解析可能)を構築した。今後は,これらの 解析系を用いて,食品添加物等のアレルギー誘因性を詳細解析していく予定である。

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© 2010 日本毒性学会
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