日本トキシコロジー学会学術年会
第37回日本トキシコロジー学会学術年会
セッションID: P125
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一般演題 ポスター
医薬品の環境リスク評価(1) 環境リスク評価の実例
*枡田 基司朝倉 純子山本 敦子三野 美都里新野 竜大刀祢 英松本 建大久保 博充牧戸 直紀小安 純子佐藤 保夫大堀 祐司斎藤 穂高
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抄録
 欧米では人用医薬品の申請時に環境生物への影響を評価した「環境リスク評価書」を添付することを既に法的に義務付けており,その 手順と方法をガイドライン化している。日本は,農薬や一般化学品では環境生物への影響を考慮しているが,医薬品を規制する「薬事法」 は,環境生物への影響評価は規制対象としていない。そのため,環境リスク評価のガイドラインが法制化にむけ,現在検討されている。
 そこで本発表では,欧州医薬品庁(EMEA)の環境リスク評価ガイドラインに従い,イブプロフェンおよびニザチジンの環境リスク評 価を行った結果を報告する。
 EMEAの環境リスク評価は,暴露評価を行うPhase I,リスク評価を行うIIA及びIIBの3段階評価で構成されている。Phase Iでは,1 日最大用量値を用いて,簡略化された数式により予測環境中濃度(PEC)を計算する。このPECが0.01μg/L以上の場合は,環境生物に 対するリスクが懸念されることから,次のPhase IIAでミジンコなどの生態毒性試験を実施し,環境生物に対する予測無影響濃度(PNEC) を算出する。その結果,PEC/PNEC比が1を超える場合は,さらに精緻化したリスク評価を行うPhase IIBに進む。その他に環境中で 高い残留性や吸着性が懸念される場合も土壌生物や底質生物などへのリスク評価を行うため,Phase IIB段階に進むことになる。
 イブプロフェンおよびニザチジンのいずれもPhase I でのPECが0.01μg/L以上であった。ニザチジンは水生生物の生態毒性試験を 実施した結果,PEC/PNEC比は1以下であり,有機炭素吸着係数Kocも10,000未満であったため,水生および陸生生物へのリスクは 低い結果となった。一方,イブプロフェンは底質に10%以上移行したことから,Phase IIBにて底質生物へのリスク評価が必要となった。
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© 2010 日本毒性学会
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