抄録
【目的】抗精神病薬は,線条体でのドパミンD2受容体遮断作用を介して,パーキンソン病症状などの錐体外路系運動障害を誘発する。一方,
これら錐体外路系副作用は中枢セロトニン神経系により発現調節を受けており,これまでの報告から,5-HT1A作動薬がhaloperidolに
よる錐体外路障害を改善することが示されている。今回,5-HT1A作動薬の錐体外路障害改善作用のメカニズムを明らかにする目的で,
以下の行動薬理学的実験を行った。
【方法】1)5-HT枯渇実験:p-Chlorophenylalanine(PCPA)を3日間投与したddY系雄性マウスを用い,haloperidolのブラジキネジア
およびカタレプシー誘発作用に対する5-HT1A作動薬8-OH-DPATの効果を検討した。2)ドパミン神経障害実験:C57BL/6J系雄性マウ
スにMPTPを4日間投与した後,haloperidol誘発ブラジキネジア試験を行った。3)脳内局所投与実験:SD系雄性ラット用い,予め背
外側線条体あるいは大脳皮質運動野にガイドカニューレを慢性的に埋め込み,一定の回復期間後に,各脳部位へ8-OH-DPATを微量注
入し,haloperidol誘発カタレプシーに対する作用を評価した。
【結果および考察】5-HT1A作動薬8-OH-DPATは,haloperidolによるブラジキネジアおよびカタレプシーをいずれも用量依存的に改善
した。一方,PCPA処置した5-HT枯渇動物においても,対照動物の場合と同様に,8-OH-DPATは顕著にhaloperidol誘発ブラジキネ
ジアを改善した。また,MPTPによるドパミン神経障害モデルにおいても,同様の改善効果が認められ,8-OH-DPATの改善作用が非
ドパミン神経上の後シナプス性5-HT1A受容体を介することが示唆された。さらに,脳内局所投与実験において,背外側線条体あるい
は大脳皮質運動野への8-OH-DPATの微量注入はhaloperidol誘発カタレプシーいずれも有意に改善し,この改善効果は5-HT1A拮抗薬
WAY-100135により抑制された。 以上の結果から,5-HT1A作動薬は,主として背側線条体および大脳皮質に存在する後シナプス性
5-HT1A受容体を刺激することにより,錐体外路障害を改善するものと考えられる。