抄録
本研究では,精巣毒性学的なマイクロRNAの役割を検討するため,エチレングリコールモノメチルエーテル(EGME)を50及び
2000mg/kgをラット(1群N=5)に単回経口投与した。投与後6及び24時間の精巣を採取し,右精巣は遺伝子発現解析用に液体窒素で凍
結し,解析まで-80℃で保存した。左精巣は病理評価用に中性緩衝ホルマリンに固定した。対照群としては,媒体である蒸留水を同様
に投与し,投与後6及び24時間に精巣を採取した。EGME投与によって発現変動するマイクロRNAをスクリーニングするため,各群5例,
凍結した精巣100mgをプールし,miRNAeasy mini kitにてマイクロRNAを含んだ総RNAを抽出した。これをAglient社製のマイクロ
アレイにてDuplicateで解析を行った。その後,個体別に総RNAを抽出し,発現変動したマイクロRNAに関して定量PCRで発現量を確
認した。精巣病理組織学的検査の結果,EGEM 2000 mg/kg投与6及び24時間において,精母細胞の退行性変化が確認された。マイク
ロアレイのスクリーニングおよびPCR発現検討の結果,EGME 2000mg/kg 投与6または24時間群で対照群に比し2~10倍発現が増
加したマイクロRNAにはmiR188,125a-3p, 760-5p,発現が減少したマイクロRNAにはmiR449a, 92aが見出された。これらのマイ
クロRNAの塩基配列から精子形成に関与するmRNA:InhibinB,Notch1,Caspase,BcL2などに相同性があることがわかった。したがっ
て,今回見出したマイクロRNAは,EGMEによって惹起される精巣毒性メカニズムにおいては,ホルモン制御,シグナル伝達および
アポトーシスに関与していることが示唆された。