日本トキシコロジー学会学術年会
第37回日本トキシコロジー学会学術年会
セッションID: P184
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メチル水銀はヒト脳微小血管内皮および周皮細胞のヒアルロナン合成を誘導する
*廣岡 孝志山本 千夏安武 章衞藤 光明鍜冶 利幸
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抄録
【目的】水俣病の部位特異的大脳傷害を誘発する脳浮腫の発生について,我々は,メチル水銀のVEGFシステムの活性上昇による脳微小 血管透過性亢進がその分子基盤を構成することを示唆した。一方,細胞外マトリックス構成成分であるヒアルロナンは保水性がきわめ て高く,その過剰な蓄積は浮腫を進展させる要因となる。そこで,培養ヒト脳微小血管内皮と周皮細胞のヒアルロナン合成へのメチル 水銀の作用を調べた。【方法】内皮および周皮細胞を37℃,メチル水銀(1,2,3μM)で24時間処理後,培地中へのヒアルロナン分泌 量,ヒアルロナン合成酵素(HAS-1, -2, -3)およびヒアルロナン合成酵素の基質であるUDP-glucuronic acidを供給するUDP-glucose dehydrogenase(UGDH)の発現レベルをELISA,Real-time RT-PCRおよびWestern blot分析により調べた。【結果及び考察】内皮細 胞および周皮細胞の両方において,メチル水銀はヒアルロナン分泌量を有意に増加させた。このとき,内皮細胞ではHAS-2および-3 mRNAの発現レベルの変化は認められなかったが,メチル水銀によるUGDH mRNAの発現レベルは有意に上昇していた。UGDHの発 現レベルの上昇はタンパク質レベルでも確認された。一方,周皮細胞では,HAS-2,-3およびUGDH mRNAの発現レベルがメチル水 銀によって有意に上昇していた。これらの変化は,タンパク質レベルでも確認された。HAS-1の発現は,いずれの細胞においても検出 されなかった。これらの結果は,内皮細胞および周皮細胞がメチル水銀に対して異なる様式で応答し,結果として脳微小血管の細胞外 マトリックスにおけるヒアルロナンを過剰に蓄積させることがメチル水銀による脳浮腫形成の進展を加速する可能性を示唆している。
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© 2010 日本毒性学会
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