日本トキシコロジー学会学術年会
第37回日本トキシコロジー学会学術年会
セッションID: P185
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一般演題 ポスター
アマルガム修復による水銀蒸気曝露がラット腎臓の遺伝子発現に及ぼす影響
*高橋 好文鶴田 昌三本田 晶子安武 章佐藤 雅彦
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抄録
【緒言】歯科用アマルガムは操作性が簡便で比較的良好な性質を有し,安価なことから多用されてきたが,水銀による健康影響や環境へ の汚染が危惧され使用頻度が減少している。アマルガム修復による水銀蒸気の生体曝露はWHOの職業性水銀蒸気曝露の勧告限界値よ りも低濃度であるが,咀嚼によりリリースした水銀蒸気が組織へ取り込まれる。これまでに,我々はラットの歯牙にアマルガムを充填 し,水銀の生体内挙動について検討してきた。本実験ではtarget organである腎臓に焦点を定め,DNAマイクロアレイ法を用いて遺伝 子発現解析ならびに腎臓中総水銀濃度の測定を行なった。
【方法】10週令の雌性SDラット10匹を,5匹はアマルガム修復を行なう実験群,残りの5匹を無処置の対照群とした。実験群の上顎後臼 歯にアマルガムを4本充填し,6ヶ月飼育後に還流屠殺し腎臓を採取した。対照群も実験群と同様の手法で行なった。DNAマイクロア レイ解析(Operon,OpArray Rat,26,962 遺伝子)により腎臓遺伝子発現プロファイルを,加熱気化原子吸光法により腎臓中の総水 銀濃度を確認した。
【結果】DNAマイクロアレイ解析では,アマルガム充填を行なった実験群は対照群に比し6遺伝子に変動を認め,対照群よりも2倍以上 の増加を示した遺伝子は,Mgat5,RT1-Bb,2倍以下の減少を示した遺伝子は,Rara,Slc2a4,Wdr12,Timm13であった。腎臓 における総水銀濃度は対照群では0.34±0.05μg/g,実験群では10.2±5.6μg/gであり,実験群は対照群よりもきわめて多い水銀の蓄 積を示した。以上の結果より,アマルガム修復による水銀蒸気曝露がラット腎臓の遺伝子に影響を与えることが示唆された。遺伝子の 変動がAdverse effectの原因であるか否かについてはさらに検討したい。
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© 2010 日本毒性学会
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