抄録
全長約2メートルの巨大な分子であるゲノムDNAが、直径約10マイクロメートルの細胞核にどのように収納されているかは、細胞の機能発現にとって大きな問題である。実際に、クロマチンの細胞核内での配置は、組織、遺伝子により異なっている。また細胞核には、ゲノムDNA以外にも、PMLボディ、Cajalボディなどのいわゆる核ボディが存在する。これらの機能には不明な点があるものの、その数、大きさ、配置は細胞核機能と関連している。これら位置や配置などの形態学的差異だけでなく、クロマチンや核ボディーを構成する因子の動的振る舞いも、細胞核機能を理解する上で非常に重要である。このような細胞核の構築すなわち細胞核構造に関する知見は、近年の解析技術の進歩と共に、急速に蓄積されつつあり、エピジェネティクスに加えて遺伝情報制御の新たな観点として注目されている。我々は、これまで神経細胞の分化、成熟の過程および成熟ニューロンでの機能発現時における細胞核構造を解析してきた。遺伝子座の核内配置については、隣接する遺伝子座をクロスリンクした後マイクロアレイで探索するCircular chromosome conformation capture (4C)法や、新生RNAに対するfluorescence in situ hybridization (FISH)や遺伝子座に対するDNA FISH法を用いて、異なる遺伝子座同士の会合や核膜への局在などの観点から解析している。また、クロマチン構成因子の動的な振る舞いに関しては、Fluorescence recovery after photobleach (FRAP)法や、塩抽出法を行っている。本シンポジウムでは、細胞核構造の解析技術を紹介しつつ、その技術を用いた我々の最近の研究成果を提示するとともに、細胞核構造の解析の意義について考察したい。