日本トキシコロジー学会学術年会
第38回日本トキシコロジー学会学術年会
セッションID: S4-3
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バイオマーカー
ゲンタマイシン腎障害モデルラットのメタボローム解析
*佐山 絢子齊藤 航甲斐 清徳今岡 尚子藤本 和則青木 桜清澤 直樹矢本 敬神藤 敏正三分一所 厚司
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抄録
【目的】近年、尿、血液あるいは組織に含まれる内因性代謝物濃度を網羅的に測定する手法であるメタボローム解析が普及しており、低侵襲性サンプルにおける新規毒性診断/予測バイオマーカー獲得の可能性が期待されている。今回、gentamicin腎障害モデルラットの尿、血液、肝および腎のメタボローム解析を行った。
【方法】9週齢の雄性F344ラットに腎毒性物質gentamicin(0、30、90 mg/kg/day)を7日間皮下投与し、症状観察、体重測定、尿、血液および組織学的検査に加え、UHPLC/MS/MSおよびGC/MS法を用いた尿、血漿、肝および腎のメタボローム解析(Metabolon社)を行った。
【結果・考察】30 mg/kg/day以上で赤色尿や腎尿細管の変性がみられ、90 mg/kg/dayでは尿細管の壊死および再生、肝臓グリコーゲン減少、AST上昇ならびにTG減少が認められた。メタボローム解析では、各サンプルでそれぞれ400個以上の代謝物が測定され、そのうち約半数が同定された。さらに、有意な濃度変動を示す代謝物が30 mg/kg/dayでそれぞれ30個以上、90 mg/kg/dayでは100個以上みられ、この中には未同定物質も多いことから、新規腎バイオマーカー候補が含まれる可能性も考えられる。また、90 mg/kg/dayにおける同定代謝物プロファイル分析から、アミノ酸および炭水化物の尿中濃度増加と腎中濃度減少より腎尿細管再吸収の低下、遊離脂肪酸の血中濃度増加と肝中濃度減少ならびに3-hydroxybutyrateの血中濃度増加傾向より脂肪酸β酸化の亢進が示唆された。さらに、腎中では組織障害や細胞膜リモデリングに関連する複数の代謝物に有意な変動が認められ、これらは組織学的な尿細管壊死および再生を反映していると考えられた。生体内における現象を包括的に捉えることのできるメタボローム解析は従来にないアプローチであり、毒性発現メカニズム解明およびそれに続くバイオマーカー獲得に向けた活用が今後一層期待される。
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© 2011 日本毒性学会
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